「(ファッションは)実際に着用してみて、周りの感想なども聞きながら楽しむものだと感じていたので、レンタル形式でたくさんの洋服に出会える仕組みにしました。ただ対象となる商品を『自分で選んでください』としてしまっては、時間が足りなくて自分に合った洋服を探せていない人の課題を解決できない。だからスタイリストが洋服を提案するかたちにしたんです」

「当時はサブスクという言葉も浸透していなかったので、ここに行き着いたのも結果論なんです。最初は1点1点貸し出すことも考えたのですが、忙しい女性に使ってもらうことを考えた時に、返却期限やクリーニングの手間なども気にせずに好きなタイミングで返すことができ、新しい洋服にどんどん出会えるような体験を作りたいと考え月額制のサービスにしました」(天沼氏)

airClosetのサービスイメージ
 

サービスを使う中で本当に好きな服が見つかった場合には、そのままスムーズに購入できる仕組みも作った。実際にエアークローゼットの開示資料によると月額会員の半数はairClosetを通じて商品を購入した経験があり、販売による売上は総売上全体の約13%に達している(2021年6月期の実績)。

このことからも“新しい服に出合う”ことへのニーズが存在していることがわかる。

ローンチまでに苦戦も、2.5万人の事前登録で手応え

airClosetのようなビジネスではリアルな洋服をレンタルするため、保管するための倉庫やクリーニングの仕組み、メンテナンス、在庫管理など考慮しなければならない要素が多いのも特徴だ。

エアークローゼットのオペレーション
エアークローゼットのオペレーション

天沼氏たちの場合も、そもそもサービスをローンチするまでに時間を要した。ファッション業界になじみのない男性3人が立ち上げた企業のため、仕入れ先となるアパレルメーカーとのコネクションが全くない状態からのスタートだった。

物流倉庫に関してもパートナーの開拓に苦しんだ。レンタルの形態に精通している会社は限られており、商品の返却や再貸し出しに関するオペレーションが整っていないことの方が多い。商品管理の業務フローなども異なるため「いろいろな企業に相談にいったもののほとんど断られてしまったので、最初は自分たちで手運用でやってみようかと考えたこともあった」(天沼氏)という。

一方でローンチ前に手応えをつかめた瞬間もあった。2014年10月にティザーサイトを開設し、事前登録を募ったところ約3カ月で2万5000人ほどが集まったのだ。

創業したばかりのスタートアップが手がけるサービスにも関わらず、自分たちが伝えたいメッセージや届けたい価値に対して興味・関心を抱いてくれるユーザーが2万5000人も存在する──。サービスへの手応えを掴めた瞬間という観点で、天沼氏はこの時をターニングポイントの1つに挙げる。