1000人規模の企業となった今は自分たちが構築できるプロダクトや機能の数が増えたので、6〜12カ月先までの戦略を描き、チームの足並みを揃える必要があります。全社に戦略を伝えるには、(情報発信のための)複数のチャネルの構築と、繰り返しの伝達が必要だと考えています。そこで戦略を文書として経営陣とともに書き出し、社内で共有しています。この文書は半年ごとに更新します。そして、全員が参加する会議では、私が一番気になっていることを共有します。隔週でビジネス・レビュー・ミーティングも開催しています。これは誰でも参加でき、議事録にもアクセス可能となっています。

意思決定の分散を可能にするには、優秀な人材を採用し、彼ら彼女らに適切な情報を提供する必要があります。会議以外では、OKR(目標を設定し管理する方法)のテンプレートを使ってマイルストーンの履歴を追跡し、(情報管理ツールの)「Notion」や「Google Slides」に集合知をまとめ、全員に対して向かうべき方向を示します。

私たちは、従業員との接点を常時必要とすることはなく、社員に責任を持たせることができる組織運営をしています。プロダクト開発の戦略は、重点分野ごとに分けられ、各チームに委ねられます。それぞれのチームは独立しており、技術者やマーケティング担当など必要な人材を備えています。チームはそれぞれの指標を目指して自律的に機能するようになっています。すべての指標は企業のトップレベルの目標に関連づけられ、チームが顧客の課題を解決していることを保証するものとなっています。

──成長において、全社の足並みをそろえるために、どのような変化が必要でしたか。

これまで、事業戦略や5S(全社的に最も重要とされる5つの取り組み)の文書化、全員参加の会議の実施、そしてOKRの導入など、さまざまな実験を行ってきました。OKRには長所と短所があります。そのため私たちは、OKRを単なる物差しとしてではなく、道しるべとして使い、計画の一貫性と目標の再調整を確実なものとしています。

成長に従って、いくつかのシステムは機能しなくなりました。例えば、私は以前、各チームと隔週でビジネス・レビュー・ミーティングを開いていました。3チームの頃はよかったのですが、15チーム以上になると、効率が悪くなり、うまく機能しなくなりました。最終的には、各チームを部門として組織化し、各部門が責任を持って隔週でビジネス・レビュー・ミーティングをするようにしました。私が目指しているのは、調整と実行にかかる時間のバランスを常に考えながら、チームがサイロ化しないような情報フローをデザインすることです。