政府の補助金政策に後押しされ、これまでで最大級規模の建設計画が全国で進むデータセンター。不動産投資市場としてのうまみにも注目が集まり、IT企業以外の参入企業も続々と増えている。過熱の一途をたどる市場だが、そこには意外なリスクも見え隠れする。『DX180社図鑑』(全31回)の#3では、その全貌と「もうけ方」を徹底解説した。また、事業に参入している企業の成長率や年収の将来予測も明らかにしていこう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
市場倍増でIT、不動産、建設、商社の大乱戦!
だが拡大が止まり日本のAI発展も妨げる意外なリスクも
千葉県印西市。千葉ニュータウンの閑静な一戸建て住宅街を抜けて車で2キロメートル走ると、小高い丘の上に巨大な造成地が見えてくる。
大和ハウス工業が建設中の「DPDC(ディープロジェクト・データセンター)印西パーク」(完成予定図はキービジュアル写真参照)。約27万平方メートルの敷地に2030年までに合計14棟のデータセンターが建設される。総延べ床面積は約33万平方メートルで東京ドーム7個分。完成時には日本最大規模となる見込みだ。
DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の投資として、いま最も盛り上がっているのがデータセンターだ。日本国内のトラフィック量(データ流通量)は右肩上がりで急増中だ。総務省の調査では、23年11月時点の固定通信トラフィック量は19年11月の2.7倍になった。三菱総合研究所の試算では、40年までには国内のトラフィック量は20年の348倍に拡大するという予測まである。これを支えるインフラとして、国内のデータセンターを拡充する必要性が叫ばれているのだ。特に、重要データを国内で扱うという経済安全保障の観点からもこの動きは強まりつつある。
国のデータセンター投資に対しての補助金政策も後押しし、これまで立地の中心地でもあった首都圏や近畿圏のみならず、全国でデータセンター建設が相次ぐ。
特に、今年24年から3年間はデータセンター市場で過去最大の建設ラッシュが到来する。現在の計画が全て完成すれば、23年に比べて国内のデータセンター受電容量(市場規模として使われる指標)は26年までに1.4倍に増える予定だ。これを金額に置き換えると、26年度に6.2兆円。20年度の3.6兆円から倍増する計算だ(デロイト トーマツ ミック経済研究所の予測)。
データセンター投資のリターンは、「投資用不動産の中で最も高いホテル並み」といわれるほどで、なにしろ、うまみが大きい。だからこその、参入ラッシュの大乱戦となっているわけだが、ここにきて、市場拡大への足かせが発生しそうで、日本における生成AI分野の発展の妨げにもなりかねない。データーセンタービジネスには、どのようなプレーヤーがいて、どうやってもうけているのか。リスクと共に見ていこう。