だが、いずれにせよ株式市場において割安な状態で放置されていることを黙認していた経営陣への警鐘は鳴らされて然るべきだろう。同社はベンチャーキャピタルであり、時には自身の出資先の経営に株主として口を出すこともあるのだから、自分はよくて他人はダメなどという都合のいい話はあってはならない。

上場を目的化する起業家へ

同社の適時開示情報の中でも紹介されているが、過去にはIT事業のライブドアがニッポン放送の株式を買い集めたことがあり、その際も村上氏の影響下にある投資家は関係を持っていた。当時はライブドアの代表であったホリエモンこと堀江貴文氏に対して、さまざまなバッシングも行われていたが、合法的な形で株式を買い集めること自体は非難されることではない。

株式市場に上場する以上、さまざまな投資家に売買の機会が与えられており、「この投資家はいいけど、あの投資家はダメ」などという幼稚な思考を挟む余地はない。

筆者もこれから起業する、または起業して数年以内の若者と話をする機会があるが、ここ数年でスタートアップのブームが訪れ、起業した後のロードマップがある程度整備されているような印象がある。このこと自体は素晴らしいことだとは思うが、特に深い考えもなくVCから何度か資金調達をして、上場するというステップアップを既定路線のように考えていることに対する懸念もある。上場するということは当然、物言う株主が登場する可能性もあるし、外部株主が増えるほど経営の自由度は低下していく。

また、なんとなく上場を目的としてしまうことで、なんとか上場までたどり着いたとしても、その先のビジョンがないゆえに、上場してから経営がおかしくなるケースも散見される。実際、株価を見てみても上場以降ひたすら株価が下がり続けるいわゆる「上場ゴール」状態になっているベンチャー企業・スタートアップは多い。ジャフコ グループと村上氏の影響下にある投資家の今後の展開に注目しつつ、自分が所属している会社が上場についてどのようなスタンスにあるか、そこに興味を持って調べてみるのも面白いだろう。