8月5日時点ですでに15%弱を保有し、今後も51%まで買い集める可能性も示唆した。ただ、9月7日に提出された大量保有報告書(変更報告書)によれば、株式の保有比率は10.77%にまで下がっている。今回は物言う株主が上場VCに対する保有株比率を高めるという珍しい事案から、改めてスタートアップが上場を目指す意味を考えてみたい。

ジャフコ株の買い集めに動いた投資家グループ

8月15日にジャフコ グループが公開した適時開示情報に基づいて、冒頭に説明した一件の詳細を見ていこう。今年の5月ごろから村上氏の影響下にある投資家グループによって同社の普通株式が市場において急速かつ大量に買い集められていた。当該投資家グループの1つにあたるシティインデックスイレブンスが8月9日に提出した同社株式に係る大量保有報告書によれば、8月2日時点で同社の6.54%の株式を保有していることが確認された。

その後、同社幹部が村上氏をはじめとする投資家グループの幹部とそれぞれ面談をしたところ、8月5日時点では同社株式をすでに15%弱を保有しており、今後も株式を買い集めて保有株比率を51%まで引き上げる可能性も示唆した。そのため、冒頭の大規模買付行為に対する対応策を発表するに至った。

上記の内容を読んだうえで、ジャフコ グループの株価推移を見てみると、たしかに5月下旬頃から少しずつ株価が上昇し、8月に入ると上昇の勢いは加速している様子が確認できる。

物言う株主とは時に「アクティビスト」とも呼ばれ、株式を一定比率以上買い集め、そのうえで株主としての権利を行使して、企業価値が向上するよう経営の見直しを求める投資家のことを指す。物言う株主による活動はしばしば確認されるが、その対象が上場しているVCになるのは珍しいケースである。

保有株比率を高める目的は何か?

それでは、村上氏の影響下にある投資家グループがジャフコ グループの株式を買い集め、さらには51%まで保有株比率を高めようとする目的は何なのか。

同社によれば投資家グループから51%まで買い進める可能性について聞かされた際に、同社が保有している野村総合研究所の株式を流動化し、同社の時価総額の約3分の1、連結株主資本の40%にも相当する約500億円の自社株買いをするように要請されたという。

野村総研の株式売却と多額の自社株買いを要請されたことを受けてなのか、あくまで物言う株主が過去に行ってきた事例を列挙しただけなのか。その真意は分からないが、ジャフコ グループは8月15日に公開した適時開示情報において、大規模買付行為をする投資家の中には以下のように自己利益だけを追求し、企業価値や他の既存株主のことなどを考えない、“よこしまな”投資家がいることを挙げている。