①:真に経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ高値で当社株式を当社やその関係者に引き取らせることを目的としたもの(いわゆるグリーンメイラー)

②:当社の所有する高額資産等を売却処分させる等して、一時的な高配当を実現することを目的としたもの

適時開示情報は全部で51ページにもわたる長編となっているが、その3分の1は村上氏とその影響下にある投資家グループが過去に行った投資事例を紹介しており、いかに今回の大量買付行為が同社の企業価値を棄損するかを延々と説明している。

割安な状態を放置する経営陣への警鐘

現時点では村上氏とその影響下にある投資家グループが同社の株式を大量買付した理由は具体的には分からないが、同社の今年3月末の株価は終値で1875円。同じく今年3月末時点での連結ベースの1株当たり純資産は2769円ということを考えると、その時点での同社のPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回っていたことになる。

理論的にはPBRが1倍を下回る状態の株式が市場で放置されることはあり得ない。なぜなら、仮にPBRが1倍を下回っている場合、全部の株式を買い上げて、会社を解散させれば、買い上げるのにかかった金額以上の資産を手に入れることができるからだ。

もちろん、手数料や税金、その他のコストを考慮したら、その限りではなくなるうえに、実際には財務諸表に表れないリスクなども存在している。そのため、日本の株式市場にはPBR1倍を下回っている企業があふれている。

しかし、市場で割安に放置されている理由が明確で、株主として権利を行使することでそのギャップを埋める自信があるのであれば、リスクをとって株式を買い集める意味は理解できる。実際にはジャフコ グループが列挙した“悪い物言う株主”のように、グリーンメイラーとして振る舞うだけなのかもしれないし、一時的な高配当を実現するだけなのかもしれない。

同社は同じ適時開示情報の中でレオパレス21のケースも紹介している。2019年12月、今回の件と同様に旧村上ファンド系の投資会社レノが市場で株式を買い集め、15%弱まで保有比率を高めた。しかし、レオパレス21側は自社の中長期的な企業価値の向上に取り組む意図がないことが明らかであり、むしろ、株主提案を通じて自社の「解体型買収」を企図していることを推認してレノに対して否定的な対応を取った。

日本ではいわゆる「物言う株主」の提案が可決されるケースは少ないが、誰もが知っている大企業の東芝は2021年3月に開かれた臨時株主総会のなかで、2020年7月に開催した定時株主総会の運営の適正性について、独立調査を求めるというエフィッシモ・キャピタル・マネジメントの株主提案を可決した。