1つ目は事業者が支払う必要のある“請求書を立替払い”することで成長を支援する「請求書立替」だ。このサービスはD2CやEC事業者のみを対象としたもの。FivotにOEM先や広告代理店への支払いなどを立て替えてもらうことで、ユーザーはその資金を在庫の仕入れや広告への投資に使える。返済期間は6カ月のため、本来一度に支払わなければならない支出でも「6カ月に平準化できる」(安部氏)仕組みとも言えるだろう。

2つ目が新たな資金調達手段としてグローバルで広がり始めている「Revenue Based Finance(RBF)」。RBFとは事業者の将来の売上を売却し、先取りできる仕組みを指す。SaaSやD2Cなどリカーリング(定期収益)モデルの事業と相性が良く、Fivotでもそのような事業者を対象としている。すでに欧米を中心に複数のユニコーン企業が生まれている領域だ。

3つ目の「ベンチャーデット」は主にレイターステージのスタートアップの利用を見込んだサービス。請求書立替やRBFの金額感が平均で3000万円程度である一方、ベンチャーデットでは1億〜3億円の資金を提供する。経営の自由度を高める目的や株式の希薄化を抑える目的で、エクイティを補完する手段として活用できる。

近年は国内でもあおぞら銀行グループや新生銀行グループをはじめベンチャーデットを提供する金融機関が増えてきているほか、この領域に特化したデットファンドも誕生している。既存のサービスは新株予約権付融資などエクイティ要素を伴う場合もあるが、Fivotでは「(エクイティ要素のない)ピュアなデット」にこだわった。

エクイティ要素がない分だけ金利自体は高くなる可能性があるが「(株式が希薄化しないという観点で)スタートアップが使いやすいデットを提供していきたい」(安部氏)という。

Flex Capitalにおける3つのサービス
Flex Capitalにおける3つのサービスの概要と違い

3つのサービスでは裏側で共通の与信モデルを採用しており、これがFlex Capitalの核だ。手数料は3〜10%でサービスごとに異なる仕組み。審査は最短で1週間以内に完了する。「エクイティよりも安いコストで、(エクイティや従来の融資と比べても)スピーディーに必要十分な金額を調達できる」(安部氏)ことがウリだ。

「スタートアップ冬の時代」でデット調達のニーズが増加

Fivotではこれまで請求書立替とRevenue Based Financeを中心に数十社へサービスを提供してきた。

同社自身が元手となる資金を外部から調達して事業を運営していることもあり「初期から常に顧客のニーズが自分たちのキャパシティを上回り続けているような状態で、エクイティ以外の調達手段、エクイティを補完するデットのニーズを実感した1年半でした」と安部氏は振り返る。