新型コロナウイルスの感染拡大により米国で巣ごもり需要が高まった2020年後半から、中国から米国への輸入が急増。一方で米中貿易摩擦やコロナ禍による先行き懸念により、中国ではコンテナ製造量が2019年から低下していた。北米向けコンテナ運賃は2021年1月には前年同時期の3〜4倍に上昇。さらに運ばれたコンテナに積む荷がないため空コンテナとなって滞留し、特に北米西海岸の港湾混雑はひどい状況となった。マクドナルドをはじめとしたファストフード店でフライドポテトの販売が一時休止となったのは、この時期に北米からのポテトの輸入が遅れたことが原因の1つだ。

TIは、2022年の市場成長率は5.7%に鈍化すると予測。インフレの加速やロシアのウクライナ侵攻による運賃のさらなる高騰、個人消費の減速などにより、2021年〜26年の年平均成長率は3.7%にとどまるだろうとしている。

「2021年までの(コンテナ不足などによる)ひっ迫感は少し落ち着いてきていますが、引き続きウクライナ情勢や中国の状況など、国際物流における全体的な緊張感は続いていると考えています」(佐藤氏)

世界ではユニコーン企業も続々登場する「デジタル物流」のスタートアップ

こうした中、オンライン化により貿易業務の効率化を図る「デジタルフォワーディング」市場は大きく成長している。TIが調査を行った荷主・物流業者のうち81%が、デジタルフォワーダーや貨物予約プラットフォームを利用。2019年に比べて3倍に増加しているという。

国際物流の世界は建設業や不動産業と同様、大きな市場規模がありながら、利害関係者が多岐にわたることもあり、デジタル化が進んでこなかった。手続きや業務にはアナログな部分が多数残っている。メール、電話、Excelや紙、FAXといった情報共有手段が多用されており、担当者の業務負荷も大きかった。そこへコロナ禍や運賃の高騰による混乱が追い打ちをかけるかたちとなっている。こうした課題に対し、オンライン化で貿易業務の効率化を図るデジタルフォワーディングの利用が伸びているのだ。

「国際情勢の変化で影響を受けるのは物流です。そこへ生産的な仕組みを作ることは重要です」(佐藤氏)

海外では、デジタルフォワーディングを手がける物流スタートアップの成長も著しい。米Flexportは2022年2月にシリーズEで9億3500万ドル(当時のレートで約1075億円)を調達し、評価額80億ドル(同約9200億円)のユニコーンとなっている。またドイツのFortoも2022年3月に総額2億5000万ドル(当時のレートで約287.5億円)を調達し、評価額は前年6月の12億ドル(同1380億円)から21億ドル(同約2400億円)へと大きく増加している。