当日料理した、栄養バランスの良い家庭料理を提供する「体験型」のサービス
丸山氏はマチルダのサービス開始以前、「ミールシェア」の名称で別事業を展開していた。2020年にピボットしたが、当時、コアユーザーの100以上の家庭と密にコミュニケーションを取る中で、「作り手だけではなく、家族にどれだけ受け入れられるか、どれだけ子どもがファンになってくれるかがポイント」だと気が付いたという。
マチルダの強みは、この「子どもをターゲットにした」ところにある。調理が簡単になるミールキットなど、夕食の時短サービスは一般的に作り手である保護者の使い勝手が良くなるよう設計されているが、マチルダのメニューは「子どもが楽しく食べられること」を重視しているという。
「普段、夕飯の準備を担当していると、栄養・利便性・コストが気になるものですが、子どもやそのほかの食べるだけの家族は、そこにはそれほど興味がなく、みんなで囲む食卓が楽しい場になるか、どれだけおいしいかを求めます。そのため、マチルダは機能性だけではなく“家族全員をターゲットとした楽しい体験”を一貫して設計しています」(丸山氏)
また、親のニーズと子どものニーズのどちらも満たせるよう、サービス全体を設計。例えば、親の「安全で栄養価の高い家庭料理を、便利に調達したい」というニーズを満たすために、注文はLINEを使い、保育園の近くなど便利な場所にステーションを設置。夕方17時から20時のいつでも取りに行けるよう工夫している。
もう一方の子どもの「楽しく食べたい」という気持ちを盛り上げるためには、当日ステーションで受け取る際にコミュニケーションを取り、実際に食べる際にも、クレープのように自分で包むおかずにして、「食べない」子どもたちの食を楽しい体験にする工夫を絶やさない。すでに500種類ほどあるメニューから、さまざまな献立を提供しているという。
「おとな2人分+こども1人分(または大人1人分+こども2人分)」を想定したファミリーセットは実物を見るとやや少なく感じるが、炊飯器で白米を炊いておけば、確かに夕食として成立しそうだ。基本的にはすべてフタ付きの容器に入っており、汁物・主菜などは帰ってそのまま電子レンジで温めるだけで食べられる。
味は、家庭料理でありつつ、食を楽しめる献立となっており、“子どもを対象にしているから味が薄すぎる”ということもない。サラダには大人向けにバルサミコ酢のドレッシングがセットされているなど、取り分けたあとに大人も満足する味に調整できるよう工夫されている。野菜もたっぷり使われていて、「子どもに良いものを食べさせたい」という親の気持ちをよく反映しているのが分かる。