マチルダではセントラルキッチンで当日作った料理を各ステーションで受け渡ししているが、その料理を誰が作っているのか背景が見えるよう、料理にメッセージカードを添付。親子で、その料理がどういう意図で作られたかストーリーを共有することで、夕飯にコミュニケーションや楽しさを演出する。子どもたちから料理の感想が、手書きの「キッズレビュー」やLINEでフィードバックされるという。

丸山氏によると、ユーザーから「なぜかマチルダのご飯は子どもが食べてくれる」という感想が返ってくることが多いという。食べるまでにもいくつもの「体験」を組み込み、実際に食べるころには子どもを「食べたい!」という気持ちでいっぱいにする。「楽しくて、料理の背景が見える、限りなく家庭料理に近い食体験」が子どもたちがマチルダのファンになる効果を生んでいるのではないかと語る丸山氏。毎日の夕食をイベント化する「体験型」のサービスにしたというわけだ。

マチルダの食事は、すべてセントラルキッチンで当日調理。各ステーションへ運んで受け渡しを行う 画像提供:マチルダ
マチルダの食事は、すべてセントラルキッチンで当日調理。各ステーションへ運んで受け渡しを行う 画像提供:マチルダ

レシピや栄養バランスにもこだわる。500種類のレシピと、スコア化された2万5000件のフィードバックを反映して献立を生成。添付されているカードには、メニュー名のほか、どう作ったかや、おすすめの食べ方が記載されていて、セントラルキッチンの料理人への親近感がわいてくる。

回答率が30%にもなるというユーザーからのフィードバックは、LINEメニューから「10秒フィードバック」から実施。この手軽さが回答率の高さのゆえんだろう。

回答率が30%にもなるというユーザーからのフィードバックは、LINEメニューから「10秒フィードバック」から実施
回答率が30%にもなるというユーザーからのフィードバックは、LINEメニューから「10秒フィードバック」から実施

保育園の保護者アンケートでニーズが浮上、「街づくり」の一環として誘致に賛同

11月14日にオープンする「有明」のステーションは、ゆりかもめ線「有明テニスの森駅」徒歩6分に位置するマンション「ブリリア有明スカイタワー」の前に位置する。この場所にステーションができるきっかけとなったのが、隣接する保育園「ひまわりキッズガーデン有明」からの問い合わせだったという。

同園園長の福島大樹氏によると、実は保護者のアンケートでは「(給食に加えて)夕飯の総菜を提供してほしい」という意見が圧倒的に多く、約8割にもなった。同園を運営するひまわり福祉会未来戦略部部長の箕輪大祐氏によると、このアンケート結果はこの園だけの特徴というわけではなく、同法人が運営する江東区4カ所と板橋区4カ所のすべての園での傾向だという。

あまりに高いニーズに、保護者の負担軽減を目的に同法人で事業化する計画も持ち上がったそうだが、コロナ禍もあり事業化するまでには至らなかった。そんな中、アンケートの自由記入欄に、このニーズを満たす「マチルダというサービスがある」ことが記載されていたことがきっかけで、マチルダの事業を知ったという。実はマチルダは以前、有明のほかの場所に3カ月間ステーションをテスト出店していたことがあり、その時に利用していたユーザーが保育園に通っていたそうだ。