マチルダではこれまで、東京のベイサイドを中心としたローカルサービスであることや、大量製造体制が整っていないことから、メディアへの露出は控えていたこともあって、リピーターメインにママ友や地域のクチコミのみで事業を伸ばしてきたという。今回のステーション設置も、“保護者のクチコミ”からスタートとしたということのようだ。

福島氏は「認可保育園の立場でというより、有明という地域の一員として子育てしやすい街づくりに貢献したいという気持ちから、ステーションの開設に協力しました」とコメント。マンションの敷地内にステーションを設置することから、園長がパイプ役となってマンションの管理組合に紹介。会議では賛否両論があったそうだが、園長からもこのサービスが街づくりに期待できるメリットを説明するなどしてサポート。最終的に3カ月のテスト設置が許可された。

「子育て世代が移り住み、2人目・3人目を考えられる街は家事をどれだけアウトソーシングできるかが重要。子どもの支援をするにはまず親への支援が必要で、子どもに注力するだけの余力を親が持つ必要がある、という考えはマチルダのサービスと共通しています」(福島氏)

11月初旬には有明ステーション開設を前に、試食品が保育園の保護者向けに配布された。安心・安全な子ども向けの総菜と聞いて、子ども以上に保護者の反応が非常によかった。

「思ったより味が薄すぎず、食べやすい」「その日に作ったものを食べられるのが良い」「さっそくLINEの登録をした」という声が聞かれたほか、以前有明のステーションを使っていたというユーザーは「マチルダの食事は、なぜか子どもがよく食べてくれる。気に入って使っていたが、ステーションがなくなり残念だった。ほかのサービスも使ってみたが、味が濃くて合わなかった。今回は継続して設置してもらえるように、週5日のプランで頼んだ」という熱い反応もあった。

何人かの保護者からコメントとして聞かれたのは、「正直、大人のご飯は何とでもなるが、子どもの食事だけは栄養バランスの良いおいしい食事にこだわりたい」というもの。仕事と並行しながら時間に追われる中での子育てでも、そこだけはこだわりたいというポイントが、この「子どもの夕食」だということだろう。ユーザーが妥協しないポイントをつかんだことが、マチルダが価格競争に陥らずにサービスを広げることにつながっているようだ。

「フェーズ2」では製造体制をスケーラブルにすることが目標

マチルダの強みは、「リピーター率が高く、離脱率が低いこと」だと丸山氏は語る。10月初週の利用者(447家庭)のうち、4カ月以上利用しているヘビーリピーターは約6割を占めるという。