現在、当社事業のコアになっているのは、YouTuberやTikTokerを中心としたクリエイター支援とコンテンツ制作です。ソーシャルメディアの普及によって、僕らが「ミドル以下」と定義している50万フォロワー以下のクリエイターが爆発的に増えた一方で、収益化に苦戦する人たちも多くなっています。

そこで当社は「世界中に眠るすべての情熱が、スポットライトを浴びる社会を実現する。」というビジョンのもと、フォロワー数の少ないクリエイターでもマネタイズできるよう、さまざまなサポートを提供しています。

及川:広告主の企業起点ではなく、クリエイター起点でサービス展開されているのでしょうか。

渡邉:両方手掛けていますが、どちらかというとクリエイター起点が多いのが当社の特徴です。クリエイターと広告主をつなぐエージェント事業を核に、クリエイターのマネジメント、動画以外のマネタイズ手段を持ちたいクリエイター向けのD2C支援やその他活動のプロデュースなども展開しています。企業のニーズに合わせ、当社が主体となり、ソーシャルメディアコンテンツを制作・運用する事業もあります。

エンタメ業界で「単一事業の会社」は顧客から選ばれない

及川:BitStarさんは早くからポートフォリオ経営を進められてきました。スタートアップ界では、最近でこそ「マルチプロダクト」を推す風潮が来ていますが、ちょっと前まではむしろ「事業を絞れ」「ワンプロダクトでやれ」というのが主流だったと思います。

渡邉:エンタメ業界では、単一事業の会社は顧客から選ばれなくなっていく傾向があります。クリエイターから見れば、広告タイアップもマネジメントサービスもD2C支援のサービスも、ワンストップで提供してくれる会社の方が付加価値は高いですよね。実際、単一事業の企業は撤退したり、ピボットを余儀なくされたりしているのも目にします。

ですから、クリエイターやクライアント企業に提供できる価値を最大化し続けることが、業界でプレゼンスを築いていくカギになると考えています。そこで、まずは隣接領域から事業のカバー範囲を広げていく手段として、M&Aにも取り組んできました。

 

及川:未上場スタートアップがM&Aを進める場合、自社の既存投資家との合意形成も1つのハードルになりそうです。

渡邉:事業戦略の中でM&A戦略全体をどう位置付けているのか、その中で個社ごとのM&Aにはどんな意義があるのか、グループに迎えることでどれだけの業績アップが見込めるのか──このあたりの説明は当然求められますし、鋭い質問も飛んできます。