シリーズ累計販売台数が100万個を超えた、首にかけるクーラー「ネッククーラー」。発売1カ月で1万1000台が売れたひとり用の着るこたつ「こたんぽ」。販売台数が20万個に迫る、ご飯を炊いたらそのまま食べられる「おひとりさま用超高速弁当箱炊飯器」。
ほかにも工事不要、水道いらずのタンク式食器洗い乾燥機 「ラクア」、「洗えるヒーターベスト」など、ニッチのなかのニッチ、ウルトラニッチな家電製品でヒットを飛ばし続けている家電メーカーが、2003年創業のサンコーだ。
同社は社員45人にして、年商約44億円。日本には上場企業が3863社(
3月17日時点)あるが、東洋経済オンラインの記事「『1人当たり売上高をバンバン稼ぐ』トップ500社」(2022年7月21日公開)によると、ひとり当たりの売上高で1億円を超える上場企業は387社しかない。上場企業の上位10%に迫る驚異的な収益力を誇るサンコーを率いるのが、山光博康だ。
小学生の頃は「成績は常に最下位」で、大学生になったら「アップルオタク」。ウルトラニッチなモノづくりで家電業界に旋風を巻き起こす山光の原点、そしてアイデアをヒットに変える目利き力に迫る。
教師を目指して上京
山光は1965年、広島県の呉市で生まれた。アニメ映画『この世界の片隅に』で描かれたことでも知られる呉市は港町のイメージがあるが、周囲を山に囲まれている。山光が育ったのはその山を越えたところにある小さな集落で、少年時代は「地元の川で魚獲り」が日課だった。