こうした台湾の取り組みを聞いたLINEの代表取締役兼CWO(Chief WOW Officer)、慎ジュンホ氏は、「どのような問題意識を持ち、リソースを調達して解決案を出すか。(台湾政府の動きは)民間企業が課題やプロジェクトを進める時と同じです」と台湾政府を評価した。
インフォデミックへの台湾の対策
コロナ禍において、タン氏は民間企業にどのような期待をしているのか。慎氏の質問に対し、タン氏は「インフォデミック」をあげた。インフォデミックは情報の”インフォメーション(information)”と伝染病の”エピデミック(epidemic)”を組み合わせた言葉で、根拠のない情報がSNSなどを通じて急速に伝播することだ。WHO(世界保健機関)も、新型コロナに合わせインフォデミックへの警戒を呼びかけている。
「人々はストレスや不安を感じており、デマもあります。LINEのように簡単に情報を共有できる仕組みがある一方で、その情報や考えが事実をベースにしているのかのチェックなしに広がる恐れがあるんです」(タン氏)
TwitterのようなオープンなSNSとLINEの違いとして、LINEはクローズドな点を挙げる。
「LINEはエンドツーエンドで暗号化されており、受信者しか見ることができませんが、Twitterならスパムであるとフラグを立てることしかできません」(タン氏)
そこで、「LINEがファクトチェックのパートナーと協業することに期待する」とタン氏は自身の思いを述べた。LINE台湾ではCSRの一環として、どのような噂がトレンドなのかを見たり事実を確認するための取り組み「LINE Fact Checker」を用意している。
タン氏はLINE Fact Checkerに触れながら、「20万人を超える人が通報し、4万件以上がデマとわかった。言論の自由、コミュニケーションの機密を犠牲にすることなく、簡単に通報したり共有できる仕組みになっています」と語った。
これを受けて慎氏は、「台湾チームと定期的にやりとりする中で、フェイクニュースの問題が出ていました」と明かした。LINE台湾のスタッフが社会貢献を含めてこのプロジェクトを進めたいと持ちかけたので、社内プロジェクトとして全面的に支援したという。
AIは「人間社会を支援する存在」であるべき
タン氏はシビックハッカーを名乗り、AppleのAIアシスタント「Siri(シリ)」の開発に6年関わった経験もある。AIが今後もっと使われるようになり、社会に入ってくることについて意見を聞かれたタン氏は2つの点を強調した。