1つ目は、AIが人間の利益を最優先にし、ユーザーの価値と一致していること。AIは「Artificial Intelligent(人工知能)」の略だが、タン氏は「AIはAssistive Intelligent。つまり人間社会をアシストするものと考えています」と述べる。例として、「ユーザーが個人情報を気にするなら、AIもプライバシーを最優先にして機能します」と説明した。
2つ目は、相互の説明責任だ。「AIが『なぜそのような決定をユーザーの代わりにやっているのか』を説明できるようにすべきです」(タン氏)
LINEの慎氏はタン氏の意見に同意しながら、「AIはテクノロジーの観点から入ると社会問題を起こしたり、弊害が起きやすくなります」と述べながら「LINEが考えるAIは、ユーザーにどのような新しい価値や利便性を提供できるかからスタートしています」と強調した。
LINEの取り組みとして、コロナ禍で音声認識を使った自動応対により医療機関の人手不足問題に対応したり、スマホの扱いが得意ではない高齢者などを支援したりしているとした。また、顔認識技術により対面せずとも本人確認ができるなど、研究開発を進めているという。福岡市と進めているスマートシティプロジェクトでは、キャッシュレスやAIによる行政手続きの効率化など、「色々な場面でどうすればもっと住みやすい環境にできるかを議論している」と報告した。
これに対しタン氏は、スマートシティをスマートフォン、市民を個人に置き換えて、「スマートフォンがスマートすぎると人はスマホ中毒になる。スマートシティもスマートになりすぎて意思決定をするようになると、市民が市政に参加しないようになる」と警告した。
「スマートフォンもスマートシティも素晴らしいが、デザイナーのように謙虚であるべき。特定の問題にはこの解決策とロックインされるのではなく、異なるやり方を選ぶことができ、イノベーションを起こすことができるようにすべきです」(タン氏)
先端技術を一部の企業が独占すべきではない
最後の話題は、ニューノーマルの時代においてアジアのインターネット企業がどのような役割を果たすべきか、だ。
LINEの慎氏は現在のAIについて、「一部の大手企業が主導権を握って主なテクノロジーを自社で持ち、特許で独占されている状況」と、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの略)ら米国企業による独占を暗に指摘する。
「例えば新型コロナのような危機において、この技術が公平に使われているのか、アジア各国でこの技術を必要な場面で、必要な企業が持っているかという課題もあります」先端技術を一部の大手企業だけではなく自社で開発したり、欧米の目線ではなくアジアの観点で正しい人が使う世界があるべきだと思います」(慎氏)