AIを活用した医療機器開発では、GoogleやPreferred Networksといったテック企業、PhilipsやMedtronicといった医療系企業が診断支援ソリューションを開発しており、この領域では競争が激しい。また手術ロボットの領域には「da Vinci(ダビンチ)」を擁するIntuitive Surgicalや、Verb Surgicalといった企業も存在するが、今のところ、手術支援の領域には目立った競合はないと河野氏は述べている。

「今後、この領域に踏み出す企業も現れるかもしれないが、iMed Technologiesの強みは『現場』『100万枚の画像(学習)データ』『人的ネットワーク』の3点にある」と河野氏は自信を見せる。

「診断系ソリューションでは99.9%の精度があれば『使ってみようか』となるが、手術支援ではそれだけでは導入してもらえません。自分も経験がありますが、現場では一度使いにくいと思われると新しい機械は使われなくなる。どうすれば使われる機械になるか、医師としての現場感覚を生かし、アジャイル的な開発ができる点は強みとなるでしょう。また、大学病院との提携で入手した100万枚の画像を使って解析が可能なこと、医療機器メーカーの薬事・開発に携わった方々に共感いただき、サポーターとして協力いただけることも大きいです」(河野氏)

河野氏は「世界一の手術医を超える」手術支援AI開発を目指すと語る。「AIのサポートによって、若手医師のスキルが底上げされればいいと考えています。私の経験から言っても、うまくなればミスは少なくなる。『自分が若いときにこれがあればもっとよかったなあ』と言えるようなものができると思います」(河野氏)

iMed Technologiesでは手術支援AIの発展系として、医師による手術動画をAIが評価し、教育するプラットフォームの開発も検討しているとのこと。多忙で現場での指導が難しい先輩医師に代わってAIがフィードバックを行うことで、若手医師の習得速度を速められればとの考えだ。

またゆくゆくは、半自動型の手術ロボットを提供する企業との協業により、医師がいなくても完全自動で手術ができる、自律型の手術ロボットの開発も手がけたいと河野氏は述べている。

iMed Technologiesの試算では、脳血管内手術の市場は日本だけでも850億円、グローバルでは1兆円に近く、年10〜20%成長すると見積もっている。この約1兆円市場の上に、教育・評価プラットフォーム、手術ロボットをあわせた3本の矢で「新しい市場をつくっていきたい」と河野氏は語る。