河野氏は、クルマの進化に例えて手術支援AIの役割を説明する。「昔は運転手が気を付けて運転する、というソリューションしかなかったところに車体センサーが搭載されるようになって、車庫入れのときなど何かに近づきすぎるとアラートが鳴るようになりました。センサーの普及率が上がることによって、現在はより安全に運転できるようになっていて、近い将来には完全な自動運転も期待されています」(河野氏)
手術支援AIは、クルマの例で言えば「センサーとアラート」に当たるものだと河野氏。2024年には、そのAIが臨床の現場で医療機器として活用されることを目指すと話している。
「すごく高度なことをAIがするというよりは、人間が不得意でAIが得意とするところをソリューションとして用意しようとしています」(河野氏)
“世界一の手術医を超える”手術支援AI開発を目指す
河野氏は「16年間、目の前の患者さんを24時間365日ずっと現場で治療してきたけれども、それだけでは救える命、与えられる影響は限られています。世界中の患者を笑顔にしたい、世界に安全と安心の手術を届けるというビジョンのもと、iMed Technologiesを起業しました」と語る。
2019年4月、共同創業者で取締役COOの金子素久氏と2人で創業し、現在は画像解析エンジニアや医療機器・自動運転技術開発に携わってきたエンジニア、薬事担当などのメンバーを加えて、プロダクト・事業の開発スピードを上げようとしているところだ。
創業から半年ほどで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「研究開発型ベンチャー支援事業」、東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)主催のインキュベーションプログラム「東大IPC 1stRound」に採択されるなど、各所から資金面を含めた支援を得ながら順調に事業化を進めてきたiMed Technologies。その結果、脳血管内治療の指導医でもある河野氏をして「(自身より)AIの判定の方が当たっていることがある」と言わしめるほど手術支援AIの精度が上がり、5月には特許も出願した。
同社は10月1日、SBIインベストメントが運営するファンド、グロービス経営大学院(GLOBIS Alumni Growth Investment)、三井住友海上キャピタルが運営するファンドを引受先とした第三者割当増資により、シードラウンドで総額1.7億円の資金調達を実施したことも発表している。
iMed Technologiesでは今後、2020〜21年にかけて研究開発・トライアルを進めながら、薬事申請の準備も並行して行い、医療機器としての承認審査を経て、2023〜24年には手術支援AIの販売を開始したいとの考えだ。2026年には海外も含めて31億円の売上を計画、イグジットを目指すとしている。