冒頭でも触れた通り、AI創薬の領域はグローバルでもホットな領域だ。大手製薬企業とスタートアップのアライアンスが活発になっているほか、米国の主要なVCもバイオ領域のファンドを立ち上げたり、関連するスタートアップに大型の出資をしたりなど積極的な姿勢を見せている。

今回MOLCUREに出資をしたSTRIVEでパートナーを務める根岸奈津美氏の言葉を借りれば「産業革命が起こっているような状況」であり、その中でもMOLCUREは日本におけるAI創薬のリーディングカンパニーとして、世界でも戦えるポテンシャルを秘めていることが投資の決め手にもなったという。

小川氏が見据えているのは、バイオ医薬品の製造において「インテル入ってる」のCMのような世界観を実現すること。製薬企業がバイオ医薬品を作ろうと思った際に「とりあえずMOLCUREのAIを使っておけば安心と思ってもらえるような状態を作っていきたい」と話す。

AI、ロボット、バイオテクノロジーを組み合わせた同社の取り組みが発展していけば、科学者の働き方を変革できる可能性もある。現在は“ゴッドハンド”と呼ばれるような重鎮ですら、労働集約的な作業をせざるを得ない。ロボットに匠の技を伝授し、協働できるようになれば時間の使い方も変えられるかもしれない。

「ロボットで人を置き換えるというのではなく人機一体となることで、人間にしかできないクリエイティブな仕事や、本来もっと時間を使いたいことに集中できるようになる。そのような世界観の実現も目指していきたいと考えています」(小川氏)