Yahoo! JAPANやFacebookを始めとする広告媒体側のアルゴリズムの進化に伴い、従来は人力で行っていたような細かいターゲティングなどをせずとも、広告のパフォーマンスを出しやすい土台が徐々に整いつつある。
そこで重要度が増しているのが「複数のクリエイティブを作った上で、勝ち負けを検証しながら成果を出していくこと」。つまりクリエイティブの運用が動画を活用したマーケティングの主軸になってきているという。
毎回数十万円〜数百万円を払って外部の代理店や制作会社に依頼するのではなく、自社のマーケター主導で動画マーケティングのPDCAをサクサク回せる体制を作りたい。そのような事業会社のニーズに応える形でリチカは成長を遂げてきた。
冒頭でも触れた通り、リチカ クラウドスタジオのコアとなるのは動画の生成機能だ。用途やジャンルごとに用意された豊富な フォーマットを活用すれば、素材となる動画や画像を組み合わせ、テキストを入力するだけで簡単に動画ができあがる。
URLを入れるとそのサイトで使われている画像を抽出してくれる機能や、AIによるナレーション機能など、動画作成をアシストするさまざまな仕組みを搭載。単に動画を作るだけでなく、SNS広告を横断で分析できるツールなども含めて「マーケティング動画の運用」に必要な機能をまとめて提供している。
利用料金は月額20万円からの定額制。複数パターンを競わせ、数字を見ながら最適なクリエイティブを見極めていくというのが典型的な使い方だ。実際にリチカ クラウドスタジオを通じて毎月20万本以上の動画が作られているという。
松尾氏によると「プロが作ったものと遜色のないようなクオリティの動画を作れること」が大手企業での利用拡大に繋がった要因の1つだ。クリエイティブに対する基準が厳しいナショナルクライアントへの導入も進んでおり、デジタル広告だけでなくテレビCMや交通広告など利用シーンも広がってきている。
制作会社からの出発、“自分たちが欲しかったもの”を形に
なぜリチカでは大手企業も納得するような品質の動画生成サービスを作ることができたのか。その理由は同社の出自にある。
もともとリチカは“制作会社”として2014年に誕生した。その時代から構築してきた外部のクリエイターとのネットワークと、数千本の動画コンテンツを作り続けてきた中で培われた知見が現在の事業の礎にもなっている。
松尾氏たちにとって転機になったのが、2017年にリチカ クラウドスタジオの原型となるプロダクトを開発したこと。周囲の声から「動画の制作コストの高さがPDCAを回す上でのネックになっている」と感じていた中で、「ユーザー自身が手軽に動画を作れるサービスがあれば便利ではないか」と考えた。