そこで簡単な操作で動画を作れるサービスとして2018年にリリースしたところ、複数の企業から問い合わせが相次いだのだという。

リチカの創業者で代表取締役を務める松尾幸治氏
リチカの創業者で代表取締役を務める松尾幸治氏

もともとは中小規模の広告代理店が顧客の中心だったが、少しずつ実績が積み上がる中で大手の事業会社の利用も増えていった。それがより顕著になったのが、新型コロナウイルスのタイミングだ。

広告代理店を始め広告産業全体が打撃を受けた一方で、大手の事業会社では内製化のニーズが広がった。動画の制作をサポートするツールも増えてきてはいるものの、それだけでデジタル広告やデジタルマーケティングにおいて“成果を出せる動画”を作れるわけではない。

たとえばデジタル広告で成果を出すには、広告媒体ごとの特性を踏まえた上で最適な動画を作る必要がある。リチカの場合はヤフーやFacebookと公式にパートナーシップを組み、共同研究を通じて媒体ごとの知見をためてきた。

「今まで広告クリエイターは職人産業のように捉えられることが多く、数字を細かく見ている人もあまりいませんでした。自分たちはそこにテクノロジーを掛け合わせることで、どのクリエイティブがどのような結果を生み出しているのか、データとして蓄積しているんです。このデータをプロダクト側に(フォーマットや機能として)還元するということを繰り返しているため、結果としてパフォーマンスが出やすい状態を作れていると思います」(松尾氏)

2021年に入ってからは「デジタル広告の運用がうまくいかない」「デジタルマーケティングがよくわからない」といった抽象度の高い悩みを相談されることも増え、顧客の幅もさらに広がり始めている。

プロダクトローンチから数年、「簡易動画生成ツール単体ではそこまでの市場にはならない」と考え、より大きなチャンスを探ってきた。その中でようやく手応えをつかみかけているという。

「URLを入れるだけで動画が自動生成される仕組み」の実現へ

今回の資金調達は一気に事業の成長スピードを加速させることが大きな目的だ。組織体制を拡充しプロダクトの拡販を進めるほか、デジタル広告の制作自動化に向けた機能開発にも取り組む。

動画の自動生成については、すでに一部の用途では部分的ではあるものの実現でき始めているそう。たとえばあるウェブメディアとは、記事が公開されると「その動画の内容を紹介する動画が自動で生成される仕組み」を試験運用しており、実際にこの技術を通じて動画を作り始めている。

現時点では実装できていないものの、ゆくゆくは「URLを入れるだけでクリエイティブの候補が自動で生成され、レコメンドされる」ような世界観も実現したいという。