Nudgeの利用イメージ
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ナッジは2021年2月にジェネシア・ベンチャーズやD4V、セゾン・ベンチャーズなどから資金を調達。その半年後の2021年8月にはSpiral CapitalやHeadline Asiaなどから資金を調達しており、累計の調達額は約10億円となっている。

金融サービスを提供する多くのスタートアップは発行の際に与信が不要、かつKYC(本人確認)も不要、将来的に銀行口座に転用できるという点から“プリペイドカード”を提供している。そうした中、なぜナッジはあえてクレジットカードに目を向けたのか。その狙いを、ナッジ代表取締役社長の沖田貴史氏に聞いた。

3割が審査落ち、20・30代にはいまだ“怖い”印象のクレジットカード

前述のとおり沖田氏は一橋大学在学中にサイバーキャッシュ(後のベリトランス 、現DGフィナンシャルテクノロジー)の立ち上げに参加し、同社は2004年に上場。2012年にはデジタルガレージ傘下としてecontext ASIAを共同創業し、香港証券取引所に上場させるなど、アジアでの決済・ECインフラサービスを進めてきた。同時に金融審議会専門委員、SBI大学院大学経営管理研究科教授、Fintech協会の代表理事会長(現任)も務めてきた。

長く金融業界を渡り歩いてきたキャリアを持つ沖田氏がナッジを立ち上げるにあたって、課題に感じたのが従来のクレジットカードの仕組みだ。

ナッジ代表取締役社長の沖田貴史氏
ナッジ代表取締役社長の沖田貴史氏

「従来のクレジットカードは、多重債務者を増やさないために厳しい審査基準を設け、支払い能力に少しでも疑問を抱く人は審査の段階ではじくようにしてきました。そうした仕組みはいろんな人が考えた結果、作りあげられたものなので理解はします。その一方で非正規雇用(フリーランス)や若年層で『きちんと支払える能力はあるにもかかわらず、従来のクレジットカードの仕組みでは審査に通らない』という人がたくさんいました」(沖田氏)

フィンテックを含めた金融サービスの多くは“金融業界出身かつテクノロジーに詳しい人“が立ち上げたものであるため、従来の金融サービスの仕組みで困っている人たちの課題解決につながっていなかった──沖田氏はそう自省する。

「自分たちが良いと思うものを前提に、『もっとこういう機能があった方がいいよね』といったアプローチばかりしてしまっていたんです。その考え方は反省すべきだと思いました」(沖田氏)

20〜30代の若年層は性別や非正規雇用であることを理由に、クレジットカードに申し込んだ人の約3割は審査で落とされてしまっているという。また、クレジットカードは申し込みの際に大量の個人情報を入力しなければならず、手間がかかる。