「よく『(決済手数料だけで)儲かるんですか?』と聞かれますが、コロナ禍で小売業が苦しかった丸井も黒字を維持しています。その背景にあるのが『エポスカード』を起点としたフィンテック事業。ほかのクレジットカード会社もそうですが、(決済手数料による)事業自体は安定しています」(沖田氏)

ナッジの黒字化の目安はユーザー数25万人。2年後の黒字化を目指すという。

「決済手数料だけでブレークイーブン(損益分岐点)までは持っていける算段です。だからこそ、ユーザーが本当に必要なものだけを提供することを最優先にサービスをアップデートしていく予定です。その考えは、投資家や提携企業の方々にも理解してもらっています」(沖田氏)

カードを利用しながら、好きなクラブなどを応援

Nudgeはクレジッドカードとして利用できるほか、提携するアーティストやアスリート、スポーツクラブを選び、応援することもできる。具体的には、あらかじめ応援の対象を設定したユーザーがクレジットカードを使用すると、利用額に応じて応援先の用意するデジタルコンテンツなどの限定特典が受け取れるというもの。例えば、月1000円の利用であればアーティストの限定メッセージ動画がもらえ、月1万円の利用であればイラストなどがもらえるという具合だ。

一方、アーティストやアスリート、スポーツクラブ側は、初期費用や運営費用が不要でファン向けにクレジットカードを用意できる。必要なのはロゴなどの画像とファンに提供するデジタルコンテンツのみ。問い合わせ対応や金融リスクはナッジが負担するほか、クラブなどの提携カードを利用して発生した決済手数料はレベニューシェアを予定しているという。

現在、提携先として発表されているのは、歌手の加藤ミリヤさんのほか、サッカーJ2リーグの「ブラウブリッツ秋田」、福島県を本拠地とするプロ野球独立リーグのチーム「福島レッドホープス」、プロバスケットボールB3リーグの「岩手ビッグブルズ」、格闘技選手である堀口恭司さん、アーティスト・クリエーターや「D.D.マーケット」などのECサイトなどの約20クラブ。月に1回、支援先とともにデジタルカードのデザインを変更することも可能だ。

約20クラブと提携している
約20クラブと提携している

「世間一般で言われる投げ銭機能は『サポートしたいけど身銭を切りたくない』という心理的負担にもなります。ただ、Nudgeのようにクレジットカードでの支払いと同期させれば、そういった負担もなく応援したいクラブなどを支援できます。支援先となるクラブやアーティストとしても『寄付してください』とアピールしなくてもいいという利点もあります」(沖田氏)