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総選挙近しのムードが漂うたびに野党共闘が議論になるが、選挙協力には、共通政策のすりあわせが不可欠だ。しかしそこでネックになるのが消費税の扱い。無責任野党ならば、高福祉低負担の政策を唱えればいいが、政権担当の気概を持つ野党は、そうはいかない。政策実現の重要財源である消費税を減らす主張は矛盾してしまうのだ。毎日新聞OBの政治ジャーナリストが、2021年総選挙での枝野・立憲民主党の敗北を振り返った。※本稿は、尾中香尚里『野党第1党――「保守2大政党」に抗した30年』(現代書館)の一部を抜粋・編集したものです。

消費税をめぐる議論は
「野党の分断を誘うおもちゃ」

 30年にわたった平成の時代において、日本の政治を振り回し続けている消費税。これほどまでに日本の政界で、特定の政策がある種のシンボルとして扱われているさまは、もはや憲法問題以上なのではないでしょうか。特に、ここ10年ほどの野党陣営(支持者を含む)では、消費税に対する発言が賛否双方で先鋭化しています。

 消費税は、55年体制の「昭和の政治」の頃は与野党の対立点でしたが、ここ10年ほどは様相が変わってきました。「与野党の対立点」から「野党内部の主導権争いの道具」と化し、外部からは「野党の分断を誘うおもちゃ」として扱われてきたのです。

 民主党政権だった2010年ごろ、菅直人氏や岡田克也氏ら政権の中枢を担ったオリジナルメンバーと、小沢一郎氏ら後から民主党に加わり、政権の外にいたメンバーとの間で、党分裂につながる激しい対立が生まれましたが、この時に小沢氏らが対立の「旗印」として使ったのが消費税だったことが、今も尾を引いているのかもしれません。

 実際、メディアは国政選挙のたびに「消費税」に大きな焦点を当てたがりますし、その時には必ず「野党は消費増税に反対」(あるいは「減税訴え」)という前提に凝り固まります。野党の中に少しでも消費減税に慎重姿勢を示す声が出れば、メディアや識者などが「消費税で野党まとまれず」などと揶揄する。野党内の対立をあおり立て、あわよくば野党再編の火種にしようと目論む。そのくせ、仮に野党が消費税への反対(慎重)姿勢で結束すれば「現実的な政策を打ち出せない」「やっぱり野党は反対ばかり」とあざ笑う。

 要は野党がどちらに転んでも、その逆の側に回ってこき下ろすのです。

「消費減税言ったのは間違い」
枝野発言がネットで炎上

 2022年秋、消費税をめぐって考えさせられる「事件」がありました。立憲民主党の創始者の枝野幸男氏が、自ら代表として戦った前年の衆院選で「時限的な消費減税」に触れたことを「間違いだった」と発言し、ネット上で一種の「炎上」状態となった出来事です。

 問題の発言は、枝野氏自身が運営するYouTubeチャンネルの生配信番組で、視聴者から寄せられた財政規律に関する質問に答えるなかで飛び出しました。枝野氏は一定の財政規律の必要性を語りつつ「ただし消費増税には反対」「今絶対やってはいけない」と主張しました。そして返す刀で、衆院選で自らが述べた「時限的な消費減税」についても「政治的に間違いだった」と語ったのです。