Scanwellのウェブサイトより
Scanwellのウェブサイトより

昨年末には、Amazonで検査キット販売も開始している。これまで、尿路感染症になった場合、患者は病院に行って、検査を受け、抗生物質を受け取る必要があった。同社では、慢性腎臓病、マラリア、COVID-19の原因となるウイルスなどの検査にも取り組んでいる。

Modern Fertilityは、女性が自分で指先の血液を採取するだけで不妊の検査ができるキットを開発している。このキットではホルモンをチェックし、卵子の数、閉経するタイミング、卵子凍結や体外受精への適性を見極めることが可能だ。D2Cのビジネスモデルから始まり、現在では小売大手のターゲットでもキットが販売されている。

同社は2021年5月、遠隔医療を提供する米ユニコーン企業のRoに買収された。2017年の創業時、男性向けのウェルネスブランド「Hims」のように、勃起不全(ED)を対象とするサービスを展開していたが、現在は、女性の健康、禁煙にも手を広げ、セクシャルヘルスだけでなく、減量やアレルギーに至るまで、20以上の症状を対象としている。

今回の買収により、Roは、すでに展開をしている女性の健康に関する一連のサービスに、不妊検査など妊活要素を加えることになる。

研究先、投資先としても見逃されていたフェムテック領域

フェムテックは人口の半分がターゲットの成長領域だが、研究面、ビジネス面でもUnderserved(数字が追いついていない、サービスを受けられていない)な状況が問題視されている。

主な理由は、1977年にFDA(米国食品医薬品局)が、「出産の可能性のある女性」の臨床研究への参加を禁止するガイドラインを発表して以来、女性は医学研究に参加してこなかった(筆者注:1985年には、女性の研究参加を促す新しいガイドラインが発行されている)という規制の問題と、フェムテック領域のファウンダーの大半を占める女性起業家への投資額が極めて低い投資側の問題がある。

例えば、女性起業家への投資は、2019年のVC資金の2.8%に止まっているほか、男性ばかりのVCから資金提供を受けた女性主導のスタートアップは、(買収やIPOによる)エグジットの成功確率が大幅に低下する可能性があるとも言われている。

このような背景から、取り残されてきた女性の身体や健康に対して、今、注目が集まっている。莫大なデータが取れるようになった今、データを活用し、現代の女性がより生活しやすくなるようなサービスが、これからも出てくることだろう。パンデミックで成長がさらに加速するフェムテック領域。米国在住の筆者としては一消費者としても、最新動向を追っていきたい。