そこで中川氏は漫画業界と広告業界の仲介役を買って出た。つながりのあるクリエーターをリストアップし、広告代理店に持ち込んだところ、大手飲料メーカーの広告案件が確定した。4人のクリエーターがPR漫画を作成し、合計で4000回ほどリツイートされたという。

「クリエーターには1人あたり数十万円を支払うことができました。彼らはこれまで3000円で仕事を受けていたので、『こんなにもらって大丈夫ですか』と驚きながらも、嬉しそうでした。クライアントも効果を喜んでくれたので、『これは三方良しの事業だ』と感じ、wwwaapを設立しました」(中川氏)

年に1000万円以上を稼ぐSNS漫画家も輩出

wwwaapは現在、ぎゅうにゅう氏や佐木郁(さき・かおる)氏といった、20万人以上のフォロワーを抱えるSNS漫画家と契約。家族や“黒歴史”を作品の題材とするSNS漫画家で実業家のやしろあずき氏は執行役員を務めた。

すでにwwwaapからの報酬だけで年に1000万円以上を稼ぐクリエーターも現れた。またSNS漫画家の収益源は広告案件だけではない。キャラクターの人気が出れば、書籍やLINEスタンプ、グッズ、連載、イラストなど幅広い収入源を確保できる魅力がある。

かつてはディズニー映画で“ステマ疑惑”の炎上も

では広告主がSNS漫画を活用するメリットはどういった点なのか。中川氏は「SNSユーザーに“嫌がられない”ことにある」と話す。

「(SNS漫画に対して)『この商品は好きじゃない』という投稿は見られますが、ヘイト感の強いコメントは多くありません。ちゃんと面白く作られているからだと思います」

「漫画は静止画やイラストと比較して情報を詰め込みやすいため、宣伝をしつつも“面白さ”を提供できる。読み物としての満足度を作れるという点が魅力です」(中川氏)

とは言え、SNSのPR漫画がいくら“嫌がられない“といっても、炎上することもある。2019年にはwwwaapでも広告案件の仲介を引き受けていたSNS漫画家がディズニー作品『アナと雪の女王2』のPR漫画を投稿。その際、投稿に“PR”の表記がなされていなかったため「ステルスマーケティングだ」と炎上した。漫画家が謝罪し、ディズニーがコメントを出すに至る騒動になった。

中川氏はこの騒動へのwwwaapの関与について、「守秘義務がある」として明言しなかったが、SNS漫画が課題を抱えていたのは確かだ。

フォロワーが1万人以上のSNS漫画家を250人以上も抱える規模にまで成長したwwwaap。同社では毎月社内でコンテンツ分析会を実施しているほか、メディア対策専門の弁護士による勉強会をSNS漫画家や広告代理店向けに展開。PR漫画が健全に運用されるための環境づくりに努めていると説明する。