wwwaapはSNS漫画から生まれた“和製IP”を活用し、韓国発の縦スクロール漫画「ウェブトゥーン」や「NFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)」といった領域でも展開をもくろむ。最近では海外展開も見据え、日本だけでなく中国やベトナム、タイなどアジアでもキャラクター事業を展開するスタートアップ・クオンとの経営統合を10月に発表したばかりだ。

DIAMOND SIGNALでは本記事を含む3本の記事でウェブ漫画ビジネスの“現在地”を特集。第1弾では、韓国発のウェブ漫画「ウェブトゥーン」を制作し、スタジオ体制でのコンテンツ制作で「漫画家人口の増加」をもくろむ2社のスタートアップを紹介。第2弾では、漫画ネームの作成アプリ「World Maker」を提供し、これまで漫画業界の外に眠っていた才能の発掘を目指す「少年ジャンプ+」副編集長の林士平(りん・しへい)氏を取材した。

SNS漫画は2011年以降に登場

SNS漫画がいつ頃登場したのかは定かではないが、2011年8月にTwitterで画像が投稿できるようになって以降、徐々に漫画を投稿するクリエーターが増えてきた。以下は2012年に投稿されたSNS漫画の一例だ。

2013年ごろからは「オモコロ」などのウェブメディアで漫画を連載していた漫画家たちがSNSにも作品の投稿を開始。著名な漫画家による投稿に感化され、アマチュアを含む、より多くの漫画家たちによるSNS投稿が盛んになった。ちなみに中川氏いわく、Twitterに投稿された初のPR漫画はKDDIが漫画家・鴻池剛氏がに依頼した作品である可能性が高いという。


1投稿あたりの報酬が「たったの3000円」だったPR漫画

wwwaapは2016年7月の設立だ。UUUMのようなインフルエンサー支援企業がYouTuberをマネジメントするように、wwwaapはSNSで活躍する漫画家をマネジメントし、SNS漫画を活用した広告事業とライセンス事業を展開する。

中川氏は新卒でネットマーケティング事業やメディアコンテンツ事業を手がけるセプテーニ・ホールディングスに入社。札幌で営業所長を経験したのちに、子会社のコミックスマートが運営する漫画アプリ「GANMA!(ガンマ)」の立ち上げに関わる。その後はフリーランスとして活動。その際に、多くのSNS漫画家がPR漫画で“稼げていない”現実に直面した。

「数十万人のフォロワーを抱えるSNS漫画家によるPR漫画は、数千人がリツイートしているのにも関わらず、1投稿あたりの報酬はたったの3000円でした。(低い金額の根拠は)新人漫画家による4コマ漫画への報酬の相場が3000円だったことに起因しています。そして多くの漫画家は、広告業界の状況や、例えばインスタグラマーがどれほど稼いでいるか(編集部注:インスタグラマーの報酬は一般的に、1つの広告案件につき1フォロワーあたり1円程度とも言われている)を知りませんでした」(中川氏)

wwwaap代表取締役の中川元太氏
wwwaap代表取締役の中川元太氏

広告業界ともつながりがあった中川氏。漫画広告のニーズを業界関係者らにヒアリングしたところ、「漫画を広告の選択肢として考えていなかった」、「誰に依頼すればいいのか分からなかった」などと言われたという。だが、彼らは同時に漫画とマーケティングの相性が良いこと自体は理解していた。かつて『進研ゼミ』などの通信教材に掲載されていたPR漫画を共通体験として持つ彼らは、幼少期から“漫画の力“に気付いていたからだという。