新卒でVCに入り、キャピタリストになったらどんなことをするのでしょうか。かつて金融系のVCでは、年間何十人もの新卒を採用していました。アーリーステージ以降のスタートアップ百社以上に投資しているような、巨大なVCもありました。このようなモデルを採用するVCでは、新卒はコールドコール(飛び込みの電話営業)から始まって案件のソーシング(獲得営業)をして、徐々にVCの業務を学んでいくことになります。

僕が所属するグロービス・キャピタル・パートナーズは、ファンド規模で言えば日本でもかなり大きい方(編集部注:2019年組成の6号ファンドは400億円。これまでの運用実績は約1000億円)ですが、一方で組織としては小規模(編集部注:GPは高宮氏含め4人。その下位職であるジュニアクラスが6人)です。ジュニアとして入社した瞬間から個人でスタートアップの投資を担当し、投資後の支援をして、イグジットまでを目指す、いわば「先発完投型」のモデルです。もちろん、育成過程でパートナーがジュニアに寄り添うことで、パートナーの“職人技”を盗みやすい環境は作ります。

一方で他のVCでは、大企業とパートナリングして大企業のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の組成や運営を請け負ったり、自社のファンドと請け負ったCVCのファンドを並走させて運用したりするといったモデルも存在します。

──VCの戦略によって求められる人材や、キャピタリストの動き方が変わるということですか。

さらに言うと、シードやアーリーといった、投資を実行するタイミング(ステージ)によってもキャピタリストの動き方が変わります。

シードステージを対象にするファンドは数十億円程度と規模の小さなものが多いです。創業期のスタートアップに対して、かなり早いタイミングで数百〜数千万円規模の投資をして、大きな倍率(のリターン)を狙うハイリスク・ハイリターンのモデルです。

対象は創業期のスタートアップがほとんどなので、ビジネスモデルやプロダクトすらまだないというケースが少なくありません。なので、キャピタリストに求められるのはビジネスモデルの分析よりも、面白くてパンチの効いた人とのネットワークの有無や、ひとかどの人物かどうかを見極める力、そしてたとえ事業がまだ何もないとしても、その起業家に賭けられるという胆力などが必要です。

「シリーズA」などと呼ばれる、プロダクトが存在してPMF(Product Market Fit:自社のプロダクトが市場で適合する状態)しつつある段階のスタートアップに投資する場合には、前述の「人」についての要素に加えて、ビジネスモデルの見極めや、投資実行後に事業や組織作りで支援する力があるかといった、「お金以外で何ができるか」ということが大切になってきます。