“スピード感のあるスモールチーム”を得られるメリット

Tebikiは2018年3月に設立。2019年3月より、物流や製造業界におけるノンデスクワーカーの動画マニュアル制作を支援するtebikiを展開する(ベータ版は2018年3月リリース)。

tebikiは現場のOJT(現場教育)をスマートフォンで撮影し、編集するツールだ。字幕の自動生成や図形挿入といった機能を備えるため、難しい操作は必要ない。今ではアサヒ飲料やアスクル、Olympicグループといった大企業もtebikiを導入。Tebikiは導入社数や売り上げなどは非開示だが、0.5パーセントという低いチャーンレート(解約率)がウリだ。

Tebikiはなぜ引受先をGCPに絞り、シリーズAラウンドに至ったのか。代表取締役CEOの貴山敬氏は「1社のVCとタッグを組むことで、一枚岩の小さな経営チームを作りたかった」と話す。

「複数のVCから出資を受けている場合、多様な意見を取り入れられる一方、考えが固まるまでに時間がかかります。一方、VCが1社のみの場合、意思決定は段違いに早くなります」

「そして複数のVCがラウンドに参加したとしても、出資比率が低ければ、そのVCの我々に対するアテンションは低くなってしまいます。そのようなVCが月1回の取締役会の場でどれくらいのバリューを出してくれるのかという点には疑問があります」(貴山氏)

2020年のシードラウンドよりTebikiへの投資を担当するGCP・プリンシパルの南良平氏も、本件のメリットは“スピード感”にあると説明した。

「新規の投資家から出資を受ける場合は、事業をいちから説明する必要があります。一方、シードで投資した我々がシリーズAでも単独での投資を実行する場合は、これまでの積み上げがあるため、『いくら調達して何に使うのか』という議論に集中することができます。資金調達後もそれ以前と同じように、スモールチームでスピード感を保ったまま、事業を進めていくことができます」(南氏)

デメリットは“経営における独立性の担保”の難しさ

1社のVCが1社のスタートアップと向き合うことで、スピード感のある経営判断ができるという今回の調達。だが貴山氏は「デメリットもある」とも述べる。単独のVCから出資を受ける場合は、複数社のVCから出資を受けるケースと比較すれば当然1社のVCの声が大きくなり、経営における独立性の担保は難しくなる。だがその点さえ打開できれば、今回のようなスキームは普及の余地があるのではないかと同氏は説明する。