病院勤務の傍ら、勤務時間外に独学でプログラミングを学びから試作品作りに明け暮れた。試行錯誤の末にでき上がったのが、MediOSの原型だ。周りの医師などに話をしてみるとプロトタイプの反響が良かったこともあり、病院を退職。医療系のスタートアップでの修行期間を経て、2020年1月にコントレアを立ち上げた。

医師が多くの時間をかけているのに、患者には伝わっていない

そもそも川端氏によるとインフォームド・コンセントの内容は「講義」と「対話」に分けられるという。前者は主に病気の概要や治療方法など前提となる知識を伝えるためのもの、後者は患者の気持ちのサポートや意思決定の支援、質疑応答などにあたるものを指す。

この2つのステップのうち、川端氏が特に改善の余地が大きいと考えたのが講義の部分だ。

医師がCTやMRIの画像を用いながら患者に病気の概要を説明しても、専門用語が多くなかなか伝わらない。医師が作成したメモや資料は丁寧に書かれたものであっても患者にとっては複雑だ。テキスト中心のため視覚的にイメージするのも難しく、大量の文書の中から「自分がどれに該当するのかがわからない」という人も珍しくないという。

一方の医師も「説明に1時間以上をかけている先生もいる」(川端氏)ほどこの業務には時間を使っていて、それが長時間労働の原因の1つにもなっている。

「医師がすごく時間をかけて説明しているのに、患者には伝わっていない。そこに大きな溝があると感じことが、サービスを開発するきっかけにもなりました」(川端氏)

複雑な説明を動画で支援、医師と患者が対話に注力できる環境を

この課題の解決策としてコントレアが開発したMediOSでは、講義の部分をアニメーション動画を用いてサポートする。

MediOSの画面イメージ
MediOSの画面イメージ

同サービス上にはさまざまな病気の概要や手術説明、入院説明などに関する動画がストックされている。医師はその中から患者の症状や治療法に合った動画を組み合わせていけば、1人ひとりに最適な動画コンテンツを提供できる仕組みだ。

医師の目線では“標準的で繰り返しの説明”になりやすかった講義の部分において動画を活用することで、準備や説明の時間を短縮し、個別性の大きい対話の工程により多くの時間を費やせるようになる。患者の理解度が高まった状態で対話に進めれば、対話の質の向上も見込めるだろう。

患者にとってもメリットは大きい。動画にすることで、PCやスマホを使って、好きな時間に好きな場所で説明を受けられる。対面の場合とは異なり、気になった部分は繰り返し視聴しても良い。一度きりだった医師からの説明を自宅でも再現できるという意味で、“診察室が拡張”されると川端氏は話す。