「その時にものすごい衝撃を受けました。あくまで推測ではありますが、そのような重要事項は手術前に医師が必ず説明しているはずです。ただ、仮にそうだったとしてもそんなに大事なことが伝わっていない。そこに大きな課題を感じました」

「放射線技師の仕事の本質は、テクノロジーで医師と患者をつなぐことだと考えています。CTやMRIといった画像や技術を使うことで患者からは見えないものを可視化して、医師に届けていく。これがわかりやすい放射線技師の役割ですが、必ずしも画像に限った話ではなく、テクノロジーを用いて患者に正しい情報を伝えていくこと、つまりインフォームド・コンセントの在り方を変えていくことも自分の務めではないかと考えるようになりました」(川端氏)

VRを使って“画像”の提供方法だけを変えるだけでは、根本的な解決にはならないかもしれない──。この患者との出会いを機に、川端氏は方向転換を決め、新しいプロダクトづくりを始める。それが後のMediOSというわけだ。

口頭で繰り返し行っていた説明を動画でサポートするというアイデアを医師に話してみると、「すごく良いね」「すぐに使ってみたい」とVRの時とは真逆の反応が返ってきた。そこで手応えを掴み、病院を退職することを決意。医療系スタートアップの“先輩企業”でもあるアイリスで半年間修行を積み、2020年1月に起業した。

医師と患者をつなぐプラットフォームへ、約1.4億円調達で事業加速

MediOSは、スタートアップ風の表現をすると「医師の説明の一部を動画でリプレイスするサービス」と言えないこともない。だからこそ、川端氏もローンチまでは「『動画を使うなんてダメで、医師がやらないといけない』と医療現場から反対されるのではないかと不安も感じていた」という。

ただ少なくとも現在まではそういった反応はなく、それが少しずつ自信にもつながってきているという。

「繰り返し同じような説明をしてきている中で『必ずしも医師がやらなくても良いよね』と多くの医師が感じています。ゴールは業務の効率化ではなく、患者が理解・納得した上で治療に進めること。そのためには個別の説明や質疑応答の時間が必要であり、その点について共感いただけています」(川端氏)

コントレアでは2021年11月にCoral Capital、千葉道場ファンド、個人投資家を引受先とした約1.4億円の資金調達を実施した。この資金を活用して組織体制を強化し、サービスの機能拡充や拡販を進めていく計画だ。