「患者が本当に知りたいのは、自分がどのような病気で、どういった治療法が存在するのか。その治療法にはどういったリスクがあり、その治療をすることで自分の生活がどのように変わっていくのかといった一連の情報です。それを視覚的な動画でわかりやすく伝えることで、患者のニーズに応えられると考えています」(川端氏)

また、MediOSにはもう1つの特徴として「サービス上で患者側から事前に質問を登録できる機能」が備わっている。これによって医師への質問や疑問点の伝え忘れも防止できるという。

「(医師と患者の対話については)対話にいくまでに難しい説明が続くことで十分な時間が確保できなかったり、患者の頭がパンクして質問する余裕がなくなってしまったりすることもあります。講義部分を動画によって効率化するとともに事前に質問できる仕組みを取り入れることによって、間接的にはなるものの『医師と対話したい』という患者のニーズにも対応していきたいです」(川端氏)。

MediOSは2021年1月にベータ版のローンチを迎え、現在は大学病院をはじめとした200〜700床規模の病院数カ所で導入が進む。まだまだこれからのサービスではあるものの、医師の説明時間が患者一人あたり33%削減された事例など、少しずつ導入の効果が生まれ始めているという。

なお現在コントレアには川端氏のほかエンジニアや医師のメンバーが在籍しており、社外の専門の医師の監修のもと、動画コンテンツは自社で制作している。サービスの料金は手術件数などによって異なるものの、月額数万円程度から利用可能だ。

MediOSで提供されているアニメーション動画のイメージ
MediOSで提供されているアニメーション動画のイメージ

病院勤務のかたわら“見よう見まね”で試作品を開発

現在は自身が立ち上げたコントレアの代表としてMediOSの運営に注力している川端氏だが、冒頭でも触れた通り同氏のプロジェクトがスタートしたのは放射線技師として病院で働いていた頃にさかのぼる。

最初に川端氏が開発したのは、VRを活用することでCTやMRIの画像をわかりやすく伝えるためのプロダクト。プログラミングの知識はなかったが、終業後に夜まで病院に残り、エンジニアの見よう見まねでUnityのプログラミングを学び試作品を作った。

もっとも、最初のチャレンジは失敗に終わったという。周囲の医師に相談しても「患者さんにゴーグルをつけてもらうのは難しい」などネガティブな反応が圧倒的に多かった。

さらに大きかったのが、ある患者会で出会った70歳前後の咽頭がん患者の存在だ。その患者は手術のために声帯を摘出していたのだが、筆談を通じて「声が出なくなるとわかっていたら、手術を受けなかった」と伝えられたという。