そうしていくつかのサイトを手がけていると、一見全く違う産業に見えても、コミュニケーションの設計や集客の戦略など「基本的なマーケティングの考え方」は同じことに秋山氏は気づく。この発見が、ウェブマーケティングの大衆化という現在のコンセプトにもつながっているという。

ウェブマーケティングの大衆化へ、資金調達で事業加速

また、自分たちの業務を楽にする目的でウェブマケーティングツールを自作したことも1つの転機になった。

その後のベーシックの方向性にも大きな影響を与えた「FerretPLUS」。画像は2009年のもの
その後のベーシックの方向性にも大きな影響を与えた「FerretPLUS」。画像は2009年のもの

社内ツールとして開発したものを「FerretPLUS」として外部にも公開してみると、何もせずとも月間で5000人の会員登録が発生するなど、マーケティング業界関係者を中心に広がっていった。それ以来、秋山氏たちはさまざまな企業からマーケティングに関する相談を受けるようになる。

「ある企業から、SEOを頑張っているけどうまくいかないと相談されました。サイトを見てみると確かに検索順位は上がっているものの、受け皿となるサイトがボロボロで。当時は特定の手法に傾倒して、それこそがマーケティングであると捉えている人も多かったように感じます。なぜそんなことが起きているのかを考えた結果、そもそもマーケティングという概念を理解するための場所がないという結論に至りました」(秋山氏)

有名企業の事例紹介を多く扱う“読み物として面白いメディア”はあれど、苦しい状況に置かれている企業がウェブを活用して業績を上げていくための指針となるメディアはない──。

そこでウェブマーケティングの大衆化というビジョンとともに、実践的なマーケティングを体系的に学べる場所として2014年に立ち上げたのが「ferret」だ。そしてユーザーがferretで学んだノウハウを実行に移すための環境として、翌年にはferret Oneをリリース。それ以降の歩みは上述した通りだ。

冒頭で触れたように、ベーシックでは長年運営してきた比較メディアを昨年末に売却し、SaaS事業に注力する決定を下した。

今回の資金調達はその動きを加速させるのが目的。引き続き既存事業のアップデートを図りつつ、新たなプロダクトの立ち上げも計画しているという。

「ウェブマーケティングの大衆化のシンボルとなるようなプロダクトを、新たにローンチする方針です。(現在のferret Oneなどでは)まだ使い勝手が難しいし、満足していない部分もある。もっと簡単にできる余地があると感じているので、さらなる挑戦をしていきます」(秋山氏)