そうした取り組みが呼び水となり、2009年にNHK『BS熱中夜話』から出演オファーが舞い込む。その後は2012年4月から2014年3月までNHK高校講座「世界史」の司会を務めたほか、2016年にはNHK大河ドラマ『真田丸』のオフィシャル応援勇士にも就任している。

「少しずつ歴史系の番組に出演できるようになり、ある程度『歴史といえば小日向えり』という認知を獲得できたのかなと思っています」(小日向氏)

レギュラー番組が持てるようになってからは仕事の数、収入も安定するなど、芸能生活は順調に進んでいたという。そうした中、なぜ起業することにしたのか。

歴史グッズの通販サイトを経て、ぴんぴんころりを創業

小日向氏が起業に興味を持った背景には、父親や親戚の存在が影響している。例えば、小日向氏のおじは持ち帰り弁当の「ほっかほっか亭」を関西に初めて出店し、チェーン化したほか、スーパー銭湯「極楽湯」を展開する極楽湯を創業し、上場させた経験を持つ人物だ。

「おじだけでなく、いとこが飲食店を経営するなど、私の家系は起業している人が多いんです。その影響もあり、20歳ごろから起業したいなと思っていました」(小日向氏)

歴ドルとしての活動を続ける中、ビジネスの勉強も兼ねて、2012年11月に1社目となる会社・カステイラを創業。同社では歴史グッズの通販サイト「黒船社中」のほか、箱根で旅館業を取得し民泊事業の運営を行っていた(編集部注:カステイラは現在も小日向氏が経営を行っている)。また、友人が立ち上げたアニメの“痛部屋”事業(インテリアを趣味のコンセプトに沿ってプロデュースするサービス)などを手がける会社・SO-ZOの立ち上げメンバー、執行役員として働いたこともある。

「黒船社中では『こういう歴史グッズをつくりたい』という思いをもとに、Tシャツ制作の会社やグッズ制作の会社と提携し、モノをつくって販売する経験をしました。そこでの経験を通じて、モノを売るにはもちろん商品力が良いことは大前提ですが、マーケティングなどの手法も売上に左右するんだな、と勉強になりました」(小日向氏)

黒船社中のサイトのスクリーンショット
黒船社中のサイトのスクリーンショット

そうした中、小日向氏がシニア世代の就労支援に関心を持つようになったのは、祖母がきっかけだ。80歳まで元気に働いていた祖母だったが、8年ほど前に仕事を辞めてから元気をなくし、怪我で入院してしまったという。そこで「働くことが祖母の元気の源だったことに気付いた」(小日向氏)といい、シニア世代の就労支援を手がけることを決めた。