「子育て世帯の女性たちは家事だけでなく、育児のサポートも同時に頼むんです。そして本当の親子のような関係になり、物理的なサポートに加えて、精神的なサポートも担っていることがわかりました。そこで“家事代行”だけにフォーカスせず、おせっかいな育児・家事支援という形にサービスのコンセプトも変えていくことにしました」(小日向氏)

働きたい人、使いたい人、双方の需要が高いことはわかったが、当時小日向氏はサンミュージックプロダクションに所属していたこともあり、事業にフルコミットできる状態ではなかった。「いち早くサービスを展開したかったのですが、友人が転職してくれるまで2カ月はサービスのリリースを泣く泣く我慢しました」と小日向氏は語る。

コロナを機にサービスを磨き込み、オペレーションの仕組みを構築

こうして2019年4月にサービスを開始した東京かあさん。働きたい人、使いたい人からの需要が高いこともあり、小日向氏は2019年の年末に芸能事務所を退所することを決める。

「芸能事務所を辞めて、ぴんぴんころりの経営、東京かあさんのグロースにフルコミットすることにしました。『ここから、さらに伸ばしていくぞ!』という感じだったのですが、2020年に入ってすぐコロナ禍になり、成長が鈍化していきました」(小日向氏)

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、個人家庭を訪問し、対面で家事や育児の手伝いをしたり、料理や掃除のコツを教えたりするのは難しい。「今あるリソースでもう1つ何かキャッシュポイントをつくらなければ」(小日向氏)と考え、手づくりお惣菜の宅配サービス「つくりおき.jp」のような、お惣菜の宅配サービスを立ち上げてみた。

ただ、東京かあさんのユーザーは“お母さん”に対面で直接会って交流することにサービスの価値を感じている人が多く、なかなか使ってくれる人がいなかったという。

「そこで腹を括りました。コロナ前と比較すると、たしかに成長率は鈍化していたのですが、新規ユーザーの申し込みやシニアワーカーの登録がなくなったわけではない。むしろ着実に伸びてはいたんです。そうしたデータを見て、余計なことはせず東京かあさんに集中しようと思いました。当時、サービスの成長に対してオペレーションの設計が間に合っていなかったので、『いまはサービスを磨き込むタイミングだ』と思い、オペレーションの構築に時間を割くようにしました。その結果、解約率も下がりました」(小日向氏)

例えば、コロナ前は登録を希望するシニアワーカーと直接会って面接をしていたが、コロナ禍を機に面接の方法をLINEのビデオ通話に切り替えている。そうした背景もあってか、登録者は右肩上がりで増え続け、500人を突破する規模になっている。