今でこそ“Age Tech”と呼ばれ、注目を集めている「高齢者×テクノロジー」の領域だが、8年ほど前は多くの人がシニア世代向けにビジネスを展開しよう、とは考えていなかった。「シニア世代の就労支援はビジネスになるかどうか懐疑的だった」と当時を振り返る小日向氏。

だが、2015年に小日向氏は「ビジネスとしていける」という確信を持つ。それはシニア人材の派遣事業などを手がけるサーキュレーションが、全国約7000社の中から成長が期待されるベンチャー企業100社を選出する「ベストベンチャー100」(編集部注:ベンチャー業界誌・ベンチャー通信を発行するイシン主催のアワード)に選ばれたからだ。それから2年後、2017年7月にぴんぴんころりを設立する。

スキルシェアから、出張サービスへピボット

“シニア世代の就労支援”を軸に、ぴんぴんころりを設立した小日向氏。当初は、シニア世代のユニークスキルを販売するプラットフォーム「ユニプラ」を展開していた。シニア世代版の「ココナラ」「ビザスク」とイメージすると分かりやすいだろう。

「ビジネスとして伸ばしている感覚はあった」という小日向氏だが、実際に事業を展開してみると、自分の中で“ちょっとしたズレ”が生じていた。

「ユニプラから注文が入るシニア世代が、ハイエンドなスキルを持ったシニアばかりだったんです。私がやりたいことは普通のおじいちゃん、おばあちゃんがずっと元気でいられるような就労支援だったので、少しズレがあるなと思いました。また、ユニプラは事業の幅が広すぎるあまり、何か困ったときの第一想起がとれないな、と。幅広いスキルに対応するのではなく、もっと事業領域は狭めるべきだなと思ったんです」(小日向氏)

そこで小日向氏が目をつけたのが、育児・家事支援の領域だった。さまざまな求人媒体でシニアが活躍している領域を調べた結果、育児・家事支援は70代の人でも現役として活躍している人たちがいる領域だったという。

「育児・家事支援であれば人を選ばないですし、長く続けられる仕事だと思いました。また、需要自体も伸びている。当時、洗濯の代行などいくつか事業アイデアを考えた中、“おせっかいな家事代行”という切り口でサービスを展開することにしました」(小日向氏)

 

2018年10月から、東京かあさんの実証実験を開始。当初は独身男性が使うサービスになることを想定していたそうだが、いざ実証実験を始めてみると、想像以上に共働き、子育て世帯の女性たちからの需要が高いことがわかった。