垣屋氏は、ベンチャーマネーが入ることによって、インディーゲームの開発は世界的に盛り上がっていると話す。

従来のゲームの作り方、たとえばスクウェア・エニックスのようなゲームパブリッシャー大手が『ドラゴンクエスト』シリーズのようなビッグタイトルを作る場合は、下請けの開発会社に一定の予算を出して開発を任せ、販売をパブリッシャーが行うといったスタイルが一般的だった。

しかしインディーゲーム開発の盛り上がりによって、無名だが面白く、やがて大きくなるというゲームタイトルが数多く生まれるようになった。

この背景には「パブリッシャーを通さずにゲームを流通できる環境」「自らはゲームを作らず、他社への投資にかじを切る大手」の存在があると垣屋氏は指摘する。

パブリッシャーを通さずにゲームを流通できる環境

大手パブリッシャーを通さずにゲームを流通させるプラットフォームとして、近年台頭しているのが「Steam」だ。

「ただし」と垣屋氏は、インディーゲームがインディーゲームのままでは、大型タイトルを出しにくい事情も語る。

「ユーザーから見れば、そうは言っても大手が出すゲームは開発コストや人件費もかかっているので面白いんです。インディーゲーム開発会社がSteamでゲームを出すにしても、限られた人数で開発したり、クラウドファンディングに頼ったりというだけでは、そうした大手に太刀打ちするには限界があります」(垣屋氏)

そこで登場するのがゲーム特化型のVCファンドだ。インディーゲーム開発会社とSteamなどのプラットフォームとの組み合わせという仕組みの中に、ベンチャーマネーが入ることで、開発会社は資金調達が可能となる。大手パブリッシャーを経由しなくても、開発コストをかけて面白いタイトルを制作して世に出すこともできるようになる。

たとえば米国のVelan Studioは2017年、VCファンドから700万ドル(約8億円)を調達した後、2019年には大手パブリッシャーのエレクトロニック・アーツ(EA)とオリジナルのマルチプラットフォームタイトル開発契約を締結することに成功した。さらに任天堂との間でも2020年10月発売の『マリオカート ライブ ホームサーキット』を開発している。これらは、下請け会社としてではなく開発会社としての契約であり、EA、任天堂と対等な関係を築くことに成功しているように見えると垣屋氏はいう。

「今後は、パブリッシャーのポジションも危うくなってくる可能性があります。ベンチャーマネーを活用する開発会社が増えれば、従来の日本的な『下請けの開発会社の名前は出ない』といった構造は崩れていくでしょうし、パブリッシャーも開発会社から選ばれる存在になる必要が出てくるからです。ゲーム業界の今までの仕組みがこれからどうなっていくかという点は、よく考えなければなりません」(垣屋氏)