そして、シェアされた方も共感して、楽曲をフルサイズで聴きたいと思ってSpotifyのようなストリーミングサービスで検索する。それによって、一過性の楽曲バズではなく、楽曲がフルで何度も聴かれてアーティストに跳ね返っていく。そういったストリーミングならではのヒットの生まれ方が去年、今年と続いてるのかなというふうに思います。

アニメ主題歌でなくても、YOASOBIの海外人気が高まっているワケ

──今年のYOASOBIのデータに関しては、特筆すべきところが2点あると思います。まず1点目は、昨年バイラルチャート(ソーシャルプラットフォーム上で起きている現象を反映したチャート)で年間1位を獲得した「夜に駆ける」が今年は「国内で最も再生された楽曲」3位にランクインし、さらにYOASOBI自体が「国内で最も再生されたアーティスト」2位にまで上昇していることです。

YOASOBIはもともと楽曲の世界観先行で、女の子が横を向いた絵をアーティスト写真にするなど、ちょっと謎めいた存在であり、若い世代のインターネットカルチャーが発端となってヒットしたアーティストでした。それが去年、「紅白歌合戦」で初めて地上波でパフォーマンスをしたことで一気に名前も存在も楽曲も全国区に知れ渡り、今年に入ってからメインストリームで幅広い世代にもどんどん届いていくようになったと思います。

「夜に駆ける」は2019年の曲ですけれども、1年間にわたってさまざまな世代の人たちに届いた結果、1年を通して再生され続けました。

YOASOBIはアンダーグラウンドからオーバーグラウンドへ、すごく上手にステップアップしていったタイプのアーティストだなと思います。

アンダーグラウンドのときに支持していた人が離れることなく、その人たちを引き続き惹きつけながら、本人たちのキャラクターを出していくというふうに、うまく方向性を切り替えて、メジャーなフィールドにどんどん出ていった。自分たちのキャラクターを露出させながらも楽曲の世界観も守り続け、どんどんステップアップする。普通はなかなか難しいことです。

キャラクターを出しても今まで作り上げてきた作品の世界観を損なわずにやっていけるだけのポテンシャルが本人たちにあったのだなと思います。

今年は「夜に駆ける」だけでなく、コンスタントに新曲のリリースが続いて、YOASOBIの楽曲が常に複数トップチャートに入っている状態が続きました。それを反映した形で「国内で最も再生された楽曲」のトップ10の内に3曲(トップ20の内に6曲)が入るという結果になっています。