マネジャーのためにも必要な組織的支援(POS)

 ニュージャージー大学のジェイソン・J・ダーリンによると、コーチングスキルの低いマネジャーからのコーチングと営業担当者の低いパフォーマンスには関係があることが報告されており、むやみに1on1を導入することは諸刃の剣の可能性があるといえる。また、1on1を導入する際に最も懸念すべきは、マネジャーに多大な時間とエネルギーの投入を求めることになり、過剰な負担を負わせてしまうことである。実際に、1on1の導入がマネジャーの仕事に対する疲労感を高めることを明らかにした研究もある。これを避けるためには、組織的支援(Perceived Organizational Support)が必要になる。組織的支援(POS)とは、組織が従業員の貢献を評価し、従業員の幸福を気にかけていることに関する信念のことである。組織的支援(POS)を高めるためには、上司の支援はもとより、育成・能力開発施策、適正な人事評価・報酬、参加型の意思決定などのHR施策も必要になる。組織的支援(POS)をマネジャーが知覚することにより、時間やエネルギーの不足を補い、役割の過負荷を軽減することにつながり、マネジャーが部下の成長を感じる個人的達成感を高めるのである。人事担当者として、マネジャーの負担を増加させる施策を導入する場合は、まずは会社として適切な組織的支援(POS)が提供できているかをチェックする必要があるだろう。