企業がeスポーツチームを所有するケースは珍しくないが、Team UNITEが従来のeスポーツチームと異なるのは、プレーヤーがアカツキの社員として通常の業務もこなす点にある。実際、ゲーム事業部で検証とカスタマーサポートを行う「CAPS(キャップス:Customer And Product Satisfactionの略)」チームの一員として、モバイルゲームのバランスチェックなどを担当する。もちろん、業務に対する給与も支払われる。

Team UNITEの設立者であり、チームオーナー・事業責任者を務める渡辺佑太郎氏は設立の経緯について「安定した報酬を得ながらトレーニングを重ね、大会出場実績を積むことができる場として、プロを目指すプレイヤーにとっての登竜門にしたいと思っています」と語る。プロ選手の輩出によってeスポーツ市場の成長に貢献しつつ、アカツキとしては選手の豊富なゲーム経験を自社タイトルにフィードバックすることが主な目的だ。

現在はトレーディングカードゲームの「マジック:ザ・ギャザリング」のプレイヤー2人が所属しており、同タイトルで世界選手権準優勝経験を持つ片山英典氏がコーチを務める。片山氏はチーム設立前からアカツキの社員だったが、eスポーツとは直接関わらない業務に従事していた。だが、実績が評価されコーチに抜擢された。第1弾タイトル「マジック:ザ・ギャザリング」で、 第2弾タイトルはバトルロイヤルゲーム「Apex Legends」に決まっているが、今後取り扱うゲームタイトルは増やしていき、タイトルごとに選手募集を行う予定だという

プロゲーマーだけでない、幅広いキャリアプランを提供したい

渡辺氏は、学生時代にFPS(ファーストパーソン・シューティング)ゲームで世界2位になり、台湾で開催された世界大会に出場した経験を持つ。しかし、eスポーツだけで生計を立てていけるとは思えず、選手としてのキャリアを断念。結果的にゲームとは無関係の業界に就職した。

「昔と比べたら少しずつ改善してきたものの、日本のデジタルゲームに対する風当たりはまだ強い。世界クラスの実力を持っていた当時でさえも、周囲に『本気でゲームをやりたい』とは言いづらい雰囲気がありました」(渡辺氏)

そんな渡辺氏がアカツキに入社し、Team UNITEを立ち上げたのは「eスポーツ選手は立派な仕事ではない」というイメージを変えるためだ。数年前から日本でも高額賞金の大会が増えているeスポーツ業界だが、プロ選手が活躍しやすい環境が整っているとは言い難い。大会賞金やスポンサーからの資金だけで生計を立てることができるのはプロ選手でも一部に限られ、プレイ動画配信やゲームとは無関係の業界で日銭を稼ぎ、その合間にトレーニングをするプレイヤーも少なくない。