光本 今パッと思いついたことをお話しさせていただくと、世の中の消費者の価値観が変化しているにもかかわらず、多くの人は消費者を理解する努力をしていないのではないかと思います。リサーチ結果を見て、「今の若い子はこうだよね」と知ったつもりになっているんです。
現代はソーシャルメディアを通じた情報拡散やコミュニケーションを通じて様々なものが成立していますが、実のところソーシャルメディアを利用していない企業の担当者も多いですよね。
徳力 徐々に増え始めていると感じますが、会社で禁止されているケースもありますからね。
光本 そうですよね。ただ、消費者を理解するためには、個人としてもっと積極的に利用すべきだと思います。
新しい体験を楽しんでもらう設計力
徳力 CASHが話題になったとき、多くのユーザーがソーシャルメディア上にアプリ画面をシェアしましたよね。初めから、そうなるように意識して設計していたのでしょうか。
光本 いえいえ、思い通りにシェアしてもらえるほど、消費者を動かすのは簡単ではないので、シェアしてもらうことを前提に考えていたわけではありません。
その代わりに、CASHというアプリをどのような言葉で表現するかは、すごく意識しました。CASHは言ってしまえば、ただの「買取アプリ」です。しかし、表現の上では買取アプリという言葉は一切使わず、「目の前のものが瞬間的に現金に変わるアプリ」という表現を使い続けました。目の前のものが瞬間的に現金に変わると言われると、新しさや魔法のような感覚を覚えると思います。それが話題になった一つの要因なのではないでしょうか。
また、体験の設計にもこだわりました。CASHは査定を申し込む際に、カメラで現金に変えるアイテムを撮影するようになっているのですが、リリース当初は、入力してもらったブランド名とカテゴリー、コンディションによって金額を決めているため、写真は査定に関係していません。
つまり、本来写真を撮影させる必要はないのですが、そうすることによって目の前のものが現金化しているという体験をさせることが重要だと考えたんです。
徳力 どうすればお客さんに体験を楽しんでもらえるかにフォーカスした結果、体験したあとに、それをシェアするという行為がたまたま多く生まれたということなのですね。
光本 その通りです。
徳力 現在BANKでは、事業のマーケティングをどのように動かしておられるのでしょうか。そもそも広告は使われていますか。