経営統合で、双方の強みを生かした事業展開へ

 JapanTaxiは、配車アプリとして2011年にサービスを提供開始した。ほかの配車アプリに比べ、47都道府県という幅広いエリアをカバーし、提携台数の多さが強みだ。また、日本の老舗タクシー会社としての知見を駆使して、配車アプリだけでなく、タクシーメーターや広告タブレット、ドライブレコーダーなどタクシー事業に特化したハードウェアの自社開発を行ってきたのも大きな特徴だ。

 一方MOVは、2018年に提供開始したサービスだ。ほかの配車アプリに比べて後発ながら、DeNAの持つAIやITへの知見やマーケティング力を生かし、昨年からユーザー数は急伸しているという。

日本交通とDeNAの「配車アプリ」事業統合、ライドシェア規制にもあらためて言及DeNA常務執行役員の中島宏氏。新会社の代表取締役社長に就任予定 写真提供:DeNA

「東京以外の首都圏近郊で、あらゆるマーケティングのPDCAを回しており、成功事例が増えています。特に関西で放送したテレビCMをしていてかなりの手ごたえです」(中島氏)

 今回経営統合によって、こうした双方の強みを生かした開発やマーケティングができるようになるため、川鍋氏は「一緒になってやったら、すごくいいコンビになのではないかと感じた」という。また、それぞれかかっていたコストへの二重投資が統合されてなくなる分、事業の拡大に投資することができるようになるため、収益面での効果も期待できる。

「乗りたいときこそ、使いにくい」を変える

 今年で109年目を迎える日本のタクシー市場。「過去100年よりも直近の9年の方が産業としての変化が大きい」と川鍋氏は語る。

日本交通とDeNAの「配車アプリ」事業統合、ライドシェア規制にもあらためて言及日本交通の代表取締役・川鍋一郎氏。新会社の代表取締役会長に就任予定 写真提供:DeNA

 思い返せば、配車アプリのみならず、広告タブレットの普及やキャッシュレス化など、著しくIoT化が進んだのはこの数年の話だ。2017年からは都内で「初乗り410円」が始まりタクシー乗車のハードルは格段に下がった。また、昨年10月からは事前確定運賃制も導入されている。しかし、「まだ足りていない」と川鍋氏は話す。

「通勤時に相乗りできるサービスや、ヘビーユーザーに対する優遇措置、運転手と乗客の相互評価、ユニバーサルデザインの工夫など、まだまだ日本のタクシー業界には改善点が山積みです。どうすればもっと早くタクシーが進化するか考える中で、MOVがまっすぐタクシー業界へ向き合う姿勢はたいへん参考になった。MaaS(Mobility as a Service)のラストワンマイルをタクシーが担っていくと思っているので、『やっぱり日本のモビリティが世界一だ』と言ってもらうために(MOVと)一緒にやろうと決断するまでにそんなに時間はかかりませんでした」(川鍋氏)