海外ではUberが登場してから、スマートフォンやアプリ決済の普及が急速に進み、価値を提供している。日本では月間およそ1億回のタクシー輸送が行われているが、そのうち配車アプリでの輸送は2%に過ぎない。

「もはや日本は、“配車アプリ後進国”だといっても過言ではないと、私も川鍋さんも危機感を感じていました。あらゆる原因で、『今乗りたい!』という時こそ、使いにくくなっているんです」と中島氏は話す。

 タクシーは乗務員の高齢化が進み、車両台数も年々減少している。さらに、乗務員の1日の労働時間に対する乗客の乗車時間の割合は約20~30%と、非効率なままになっている現状がある。

 さらに、日本のタクシー事業者は車両保有台数200台以下の中小企業が圧倒的に多く、その割合は99%に達する。さらにその99%の中小企業が、日本にあるタクシー車両の86%を占有している状況だ。これは、全18万8440車両のうち、16万1579車両にも及ぶ(全国ハイヤー・タクシー年鑑2018)。これではなかなか、利便性を求めようにも課題解決に投資ができない。

ライドシェアの規制緩和を進めるべきなのか

 日本のタクシー市場を考える上で切り離せないのが「ライドシェア(相乗り)」の規制だ。ライドシェアとは、一般のドライバーが自家用車を使用して有償で乗客を乗せるというもの。日本の法律では、このライドシェアは認められていないため、Uberのようなライドシェアサービスは参入することができない。

日本交通とDeNAの「配車アプリ」事業統合、ライドシェア規制にもあらためて言及中島氏 Photo by Karin Hanawa

 このライドシェア規制に関して、中島氏は「(規制緩和を進めてうまく行くのなら進めたいが)まったくそうではないと考えている」と言う。

「海外では、ライドシェアによっていろいろな問題が起こって再規制される動きがあります。いまさら周回遅れでライドシェアの規制緩和をしても、今度は2周遅れで再規制しなければならなくなる」(中島氏)

 ライドシェア規制を緩和せず、配車アプリ後進国の日本で新たな一手を打つ策として、“日本らしい”サービス作りが鍵になる。

「日本は、電車やバスなど他の交通サービスも質が高く、安心安全のレベルもすでに世界トップクラス。さらにタクシー業界としても、会社として乗務員を雇用して丁寧に築いてきた109年間の土台がある。消費者同士をつなぐイメージの強い海外とは、事業構造自体が違うんです。乗客・事業者・乗務員の三方良しの関係にしていきたい」(中島氏)

日本交通とDeNAの「配車アプリ」事業統合、ライドシェア規制にもあらためて言及「事故発生件数」および「タクシー強盗の発生・検挙件数」が減少傾向にある 写真提供:DeNA
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 川鍋氏も「働き手にとっても、しっかりした場であるべきだと思います。プロのタクシー車両が走っていることで、それがデータの集積地となり、今後ものすごく価値を生むと思っている。プロの車が24時間365日走っている網羅性の価値は今後高まっていくのではないでしょうか」と意気込む。