徳力 応援というより、祈りなんですね。
けんすう はい。モーニング娘。のライブに行ったときだったかな。前の人が両手を合わせて拝んでいたんです。好きになりすぎると、もう反応なんて返ってこなくてもいいんですよ。拝むしかないんだと思って(笑)。
徳力 たしかにマンガは、そういう存在ですよね。私も井上雄彦さんに会えたら、本当に拝むしかない(笑)。実際に、クリエイターの方から喜びの声は届いていますか。
けんすう けっこう来ていますね。いわゆる大御所のマンガ家さんからもご連絡をいただきました。まだWebサイトとしての規模は弱いのですが、月間2500万UUあったnanapiよりも10万UUしかないアルの方が声はすごく届いている感じがします。
徳力 そういう「質」を可視化できるといいですよね。企業のマーケティング担当者も、どうしてもページビューという「量」の規模の大きいサイトを選んでしまいがちです。
けんすう そうですね。だからAKBのCD販売と握手券を組み合わせた仕組みが秀逸なんですよね。握手券という質を提供しながら、CDの販売数という量もカバーしている。そして、オリコンランキングも独占しているわけです。
徳力 マンガが抱えている課題も同じかもしれませんね。一人で何回繰り返して読んだとしても、あくまで一冊分のお金しか私たちはクリエイターに返せません。
けんすう そうなんです。それを本当はお金の面でもクリエイターに還元できたらいいんですけどね。例えば、他のマンガアプリでは200円しか支払えなかったけれど、アルであれば1000円支払える。そうすると、例えば200円であればクリエイターに還元される印税は20円ですが、アルを通せばクリエイターに800円を上乗せすることができる、みたいなアイデアもあるかもしれません。
徳力 たしかにソーシャルゲームは、1人でいくらでもお金を払って遊ぶことができますが、マンガは何回読んでも著者に入るお金は1冊分でしかありません。その御礼や感謝のサイクルの制限をアルが突破できれば、おもしろいですね。
けんすう キングコングの西野さんは、美術館建設のために行ったクラウドファンディングのリターンのひとつとして30万円で1000人の子どもを美術館に無料招待できる権利を設定しました。
子どもたちから入場料をとるのは良くないけれど、単純に無料にするだけでは、子どもたちの遊び場にされてしまうことも懸念されます。そこで、子どもの入場料を他の大人が支払ってくれたことにして、子どもに喜びと同時に緊張感を提供することも目的としています。これがすごく売れたんです。