昨年12月に発売された前田裕二さん(SHOWROOM 代表取締役社長)の著書『メモの魔力』は読者によるコミュニティが形成されていますが、おそらく前田さんも編集者の箕輪厚介さん(幻冬舎 編集者)もコミュニティをつくろうなんて一切考えていなかったと思います。
前田さんが100万部を販売するという桁外れのチャレンジ目標を掲げたところ、書店員や読者がどう売るかを考え始めて、それがコミュニティになっていったのでしょう。
徳力 つまりコミュニティをつくるのではなく、まずコミュニティが存在する理由をつくることが必要なのでしょうか。
けんすう はい、その通りだと思います。そういえばIT批評家の尾原和啓さんがこんな話をしていました。宗教のコミュニティができあがっていくには段階があって、最初は人についていく「教祖の時代」、次にその教えをまとめた「教典の時代」、そして最終的には「教会の時代」になり、その厳かな雰囲気に魅せられて人が増えていくのだと。企業も、この順番を追うべきではないでしょうか。
徳力 たしかに、宗教がコミュニティの原点だとすると、それを参考にするのは大事ですよね。最初は、開発者やブランドマネージャーが苦労を共有しながらファンをつくり、次に製品やサービス自体が教典的な役割を果たしていく、と。
けんすう そうですね。先ほどのシャープのTwitterを例に言えば、中の人の「シャープさん」は教祖だけれど、まだ教典にまでは辿りついていませんよね。シャープの製品が教典となり、最終的にはシャープ製品を持っていること自体に大きな価値を感じてもらえる教会を目指していくということですね。
徳力 ある意味、スターバックスが「リア充」の可視化に成功していることに近いですね。
けんすう たしかにスターバックスも、いろんなカフェがある中で、飛び抜けておしゃれというわけではないですもんね。これはAppleも同じで、Apple製品を持っていると、かっこいいという雰囲気があります。その段階まで企業がいくと、強いんでしょうね。
VRやブロックチェーンが「人間」を進化させる
徳力 けんすうさん(1981年生まれ)よりも、さらに下の世代、例えば「ジェネレーションY(1980~95 年頃の生まれ)」や「ジェネレーションZ(1995 年以降の生まれ)」と呼ばれる世代を見ていて、自分とは違うと感じることはありますか。
けんすう うーん、違うと思ったことは、あまりないかもしれませんね。ただ、それはインターネットという文脈で違和感を持ったことがないだけで、VRやブロックチェーンの世界にネイティブな人たちとは、感覚が違うなと思っています。