メンタルを安定させる
3つのアプローチ
さて、メンタルを安定させるイメージをつかめたら、ここで少し簡単な物理の原則について学んでいきましょう。
物理学と聞くと引いてしまうかもしれませんが、ここで扱いたいのは「心の物理学」です。
あくまでメンタルという、ふわっとした概念をイメージしやすくしているだけなので、なんとなくわかった気がする程度にとらえてもらえれば大成功です。
先ほどのテコの図でいえば、関わる力は3つしかありません。
それは、「力点」「支点」「作用点」の3つです。
人のメンタルは、この3つのみで構成されていると考えると、アプローチはシンプルになるでしょう。
メンタルを安定させるためのアプローチは、
●「力点(心の力)」を強くする
●「支点(自動思考)」を変える
●「作用点(ストレスの重さ)」を弱くする
という3つです。
メンタルが安定している状態は、この3つの方法を駆使してストレスの上げ下げをスムーズにおこなえている状態です。
逆に、メンタルが安定していないときには、この3つのうちのどれかに問題が生じているのです。
心は強くなるものなのか?
重たいストレスを簡単に持ち上げられるようになるには、
「もっと大きな力を入れればいい」
というのは、すぐに思いつくことでしょう。
しかし、「だから、心の筋トレが必要なのか」と、安易に考えてしまうのは早計です。
そこでは、2つの事実を見落としています。
●「一人の人間には限界がある」という事実
●「力には必ずそれに反する力が生まれる」という事実
どんなに心が強くても、自分より重いストレスがかかったらテコは持ち上げられません。
さらに、力点にかかる力が強ければ強いほど、その反動も大きくなります。
たとえば、メンタルの強い人が、大きな力でストレスを吹き飛ばせたとしましょう。
しかし、そのぶんの負荷は必ず跳ね返ってきます。
あなたの周りでも、「メンタルが強そうなのに、頑張りすぎた反動で倒れてしまう」というような人がいないでしょうか。
メンタルのことというのは、見た目ではわからないものです。
だからこそ、メンタルが「強い・弱い」という考えはいったん捨てて、
「誰でも心が折れることがあるんだ」
というように考えておいたほうがいいのです。
「力点」を強くするには、より強い力を込めればいいという単純な話ではありません。
メンタルを安定させるには、「力を出したいときには出す」「力を抜きたいときには抜ける」という、適度な力でラクにコントロールできるバランスが大切なのです。
それでは、どうすれば、「力点」にかかる力をコントロールできるのでしょうか。
答えは簡単です。
「誰かと支え合う」という方法があります。
こうすれば、適度な力で「力点」に力を入れられますし、疲れたときには力を抜くこともできます。
とても単純な話に見えますが、メンタルを安定させるには、一緒に力を込めてくれたり、寄り添ってくれる相手をつくることが効果的だと覚えておきましょう。