私は早速、激安スーパーに行きグムさんの写真を見せ聞き込み調査を行いました。すると日本人の店長が毎週ウインナーを大量に買って帰るグムさんのことを覚えていました。そして仲の良かった店員のフィリピン出身男性のパラワイさん(42歳)を呼んできてくれ話を聞きました。パラワイさんは私のことを警察と疑っていたようで最初は「シラナイ、ワカラナイ」の一点張りでしたが、探偵であることと、グムさんが危険なことに巻き込まれているかもしれないことを丁寧に説明すると、「ダイジョウブヨ、グムハ、ゲンキヨ」と居場所をあっさり教えてくれました。

 パラワイさんは日本人女性と結婚して永住ビザを取得しており、違法就労ではありませんでしたが、自分の立場がまずくなることを恐れて、しきりと「ワタシハ、トメタ、デモ、グムガ、ベトナムノカゾクニ、イエヲカイタイ、ダカラ、トモダチニキイタ」と自分は悪くないと弁解していました。

企業が技能実習生に
逃亡・失踪されると困る理由

 とにかく居場所を聞き出して向かってみると、ビルの解体工事現場で作業員として働いているグムさんを見つけました。

 すぐに缶詰会社の人事担当者に連絡をして、グムさんの身柄を確保してもらいました。

 その後、人事担当者はビルの解体業者と話をしてグムさんを連れて帰ったそうです。ビルの解体業者は「永住ビザを持っていると言われたからアルバイトしてもらっていた」と到底道理の通らない説明しかできず、話にならなかったようです。

 本来、技能実習生は実習生という名前でありながらも、企業との雇用関係は日本人労働者と同じです。日本人も就労してすぐに辞めてしまうことがあるように、外国人に関しても辞めてしまう(逃亡・失踪)ことがあるのは当然ですが、受け入れ先の企業は技能実習生に対して、渡航費や入国後の研修費用を支払って受け入れています。「逃げたら仕方がないから次を捜すか」と簡単にはいきません。

 技能実習生に違法な行動を取られると、外国人技能実習機構や監理団体、警察からの呼び出しに応じなければならず、企業としての信用が失墜することにもなりかねません。

 技能実習生にしても、逃亡・失踪した時点で違法になりかねず、危険な仕事や犯罪に手を染めてしまうこともあり得ます。