新年会で、社員同士が
つかみ合いのけんかを始めた

 宴会の開始から1時間後、メンバーの1人があわてた様子でA課長のところにやってきた。

「課長、大変です。すぐ来てください」

 促されて向かった先では、酒に酔ったC主任とDが言い争いをしていた。C主任はDを指差し、大声を張り上げて罵(ののし)った。

「さっきのスピーチは何だ。『今年も自分なりに頑張ります』だって?違うだろ。『今年は死ぬ気で頑張って、大きなホンマグロを釣り上げます』くらい言えないのか。そんな調子だから、営業成績が最下位なんだよ!後輩にも抜かれちまって情けない!」
「スピーチにケチをつけるのはやめて下さい。どんな話をしようと自分の自由。C主任には関係ないでしょう!」
「ふざけんな、おまえが新入社員だった頃、指導したのはこのオレだ。なのにこんなに不出来とは……」
「こっちだって一生懸命やってますよ」
「何だと?口答えするなんて生意気だ!」

 2人の争いはヒートアップし、A課長や途中からかけつけたB社長、他のメンバー、注文を取りにきた居酒屋の店員まで止めに入ったが収まらない。やがて隣同士に座っていた2人は立ち上がり、向かい合わせになるとお互いの胸ぐらをつかんだ。C主任はDを突き飛ばし、倒れたDは右手の小指に擦り傷を負った。

 なおも殴りかかろうするC主任を、後ろから羽交い絞めにしたA課長は、「いい加減にやめないか!」と一喝し、なんとかけんかは収まった。しかし、その後も2人の睨み合いは続き、開始から1時間半で新年会はお開きになった。

「けんかした2人は、1週間自宅謹慎だ」
社長はそう言うけれど……

 その後、会社に戻ったA課長とB社長。「あの2人はもともと仲が悪かったのか?」とB社長が尋ねると、A課長は首を振った。

「いいえ。C主任は後輩に対して面倒見がいいので、D君も慕っています。ケンカの理由はこっちが知りたいくらいです」
「そうか。しかし社外で社員同士が大っぴらにけんかをするのはいかんよ。居酒屋の店員に現場を見られて会社のイメージが悪くなったし、参加した他の社員にも迷惑をかけた。明日から1週間、自宅謹慎させるからそのつもりでいてくれ」

 A課長は驚いた。

「待って下さい。いきなり自宅謹慎とはひどすぎます。まず、けんかした理由を聞くのが先ですよ」
「君は私の考えに反対なんだな。じゃあ、どちらが正しいか専門家の意見を聞こうじゃないか。A君、今からE社労士にアポを取ってくれ」