毎年恒例、社員みんなが楽しみにしている年末の社員旅行。事実上全員参加が義務化しているようなものなので、会社も参加費として給料から毎月3000円天引きし、積み立てて運用していた。ところが新入社員が「大好きなアイドルのコンサートがあるので社員旅行には行かれない、積立金も返してほしい」と要求してきた。会社に積立金の返済義務はあるのだろうか?(社会保険労務士 木村政美)
地方都市にある従業員数50人の部品製造会社。給料は月末締め翌月25日払い
<登場人物>
A子:今年4月入社で設計課(メンバー数5人)に所属する23歳。
B子:A子の大学時代の友人。
C:A子とB子が夢中になっている25歳の男性アイドル。
D:設計課長でA子の上司(以下「D課長」)。
E:専務で人事、総務の責任者(以下「E専務」)。
F:甲社の顧問社労士。
社員旅行の日に、大好きなアイドルの
コンサートが重なってしまった
12月上旬の夜、自宅のソファで居眠りをしていたA子のスマホに、B子からラインが入った。
「ビッグニュース!Cのクリスマスコンサート、チケットが2枚取れたよ!もちろん行くよね?」
A子はうれしさのあまり「うっそーっ、やったーっ!」と叫びながら部屋中を駆け回った。
中学時代からCの大ファンであるA子。大学の新入生ガイダンスで隣に座ったB子と仲良くなり、お互いにCのファンだと知ってからは一緒にライブやイベントに出かけ、付き合いは2人が社会人になってからも続いた。
「コンサートは12月24日の日曜日だったよね」
A子はウキウキしながらスマホのスケジュール表にコンサートの日を書き込もうとした。しかし12月24日の欄にはすでに「社員旅行」の文字が……。
「あちゃーっ、旅行のことすっかり忘れてた。どうしよう」
毎年恒例のクリスマスコンサートは特に人気が高く、申し込み後、抽選で当たらないとチケットが購入できない。A子とB子はファンクラブの会員なので、毎年優先枠で応募していたが外れてばかり。今年もダメもとで申し込んだが、なんとB子がペアチケットを手に入れたのだ。これは絶対行かないと一生後悔することになる。A子は社員旅行をパスしてコンサートに行くことにした。