日本の背中を追い、国産アニメに自信をつける中国
2021年8月、ドイツ最大といわれる日本のアニメ・ジャパンエキスポ「ドコミ」がデュッセルドルフで開催された。「ドコミ」とはドイツ・コミック・マーケットの略称で、アニメ、マンガ、ゲーム、コスプレなど、“日本ファン必見のイベント”として欧州全域から参加者が集まる。
この年、「ドコミ」ではある変化が起こっていた。参加した欧州在住の大内奈々さん(仮名)によると、「かなりの数の欧州人が、“原神(げんしん)キャラのコスプレ”で来場していた」というのだ。『原神』は、中国のゲーム会社miHoYo(ミホヨ)が開発するオンラインゲームだ。日本でもクオリティーの高さとともに支持層を広げているが、欧州でも爆発的な人気を博している。
前述のフランクフルトの書店には、大ヒットした中国のBL小説『魔道祖師』の作者で知られる墨香銅臭氏による『天官賜福』が平積みされていた。
最近はアニメ『リンケージ』が話題で、2019年にシーズン1を出して後、中国のビリビリ動画で6億1000万回以上の再生回数をたたき出した。このアニメは「中国産アニメの光」として中国内で高く称賛されている。
同アニメは、黙示録的ファンタジーで、前例のない災害で地球の生物圏が滅亡の危機に瀕し、人間は空中都市「灯台」で生活しているというストーリーだ。この作品について、中国の英字紙チャイナデイリーは「テクノロジーと倫理の複雑な相互作用について思考を促し、視聴者は中国的SFと中国文化の神髄に没入できる」とした論評を掲載している。
世界で愛される日本のコンテンツだが、その背中を追う中国のアニメも日進月歩だ。近い将来、中国に取って代わる日が来るのだろうか。
ちなみに『リンケージ』については、2023年11月にシーズン2の予告編がリリースされたが、まだ公開されていない。中国における政権の方向性がクリエイティブな活動にもたらす影響が案じられる。