欧州の書店では日本のマンガコーナーが人気

 日本のコンテンツは中国や香港、台湾などアジア圏で長年人気を博してきたが、欧州でも年々その熱量が高まっている。

 筆者は2023年末にドイツとイタリアを訪れた。フランクフルト・ツァイル通りの大型書店・Hugendubelにある日本のマンガコーナーは、想像を超えた充実ぶりだった。

「ドイツ人は無類の読書好き」ともいわれ、店内は客でごった返しており、地下の一角では『NARUTO』や『ワンピース』や関連のアニメグッズが陳列され、壁面の棚にもぎっしりと日本のマンガが詰まっていた。「新興マーケットを開拓したい」という店側の意気込みと、これに群がる若者の熱気が渦巻き、独特の空気を醸し出していた。

 また、ローマでは、フランクフルトを上回る品ぞろえを目の当たりにした。『NARUTO』『鬼滅の刃』など「週刊少年ジャンプ」のビッグタイトルに加え、『20世紀少年』が目立つ位置に置かれていた。

能登地震で「アラブの人々」が悲しむ意外なワケ、被災地と世界をつなぐ“光”とは?日本のマンガについては売り場面積も広いローマの書店(著者撮影)

 永井豪氏の作品では『ダイナミックヒーローズ』(『マジンガーZ』や『キューティーハニー』などのキャラクターが勢ぞろいして共闘する作品)、松本零士氏の作品では『クイーン・エメラルダス』も目を引いた。

 最も驚かされたのは、水木しげる氏の『コミック昭和史』が扱われていたことだ。水木氏の天才的描写力により、時代の裏を隅々まで視覚的に訴える作品は、当地の読者にとっても貴重な史料だということなのだろうか。

 さらに度肝を抜かれたのは、つげ義春氏(かつて水木氏のアシスタントだった)の『退屈な部屋』を表紙にした作品集を立ち読みしている男性がいたことだ。しかも棚には弟のつげ忠男氏による、分厚くて重い『舟に棲む』もある。イタリアには相当コアな日本のマンガファンがいるもようだ。

 イタリアにおける日本のアニメ・マンガ研究が進んでいることは、雑誌「ANIME CULT COLLECTION」(A4サイズで114ページ)の継続的な発行からも推察することができる。

 筆者は池田理代子氏の『ベルサイユのばら』の特集号を購入したが、巻頭のCEOメッセージからは、アニメーションのレベルの高さ、作品が与えるメッセージの現代性(主人公オスカルが女性であるという点)、また欧州では人によっては語ることをためらう「フランス革命」を題材にしていることなど、複数の点において強い衝撃を受けている様子が伝わってきた。

 欧州では日本のマンガが相当のインパクトを持って受け入れられているようだ。